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国会リポート vol.327(2017年2月28日発行)

 相変わらずトランプ旋風が吹き荒れています。各国首脳がその対応に苦慮している中、安倍総理だけが相互信頼の人間関係を築き上げつつあることに対し、野党やマスコミの一部からは「安倍総理はトランプ大統領にすり寄った」などと論評していますが、実態は全く別のようです。トランプ大統領は過去の経験からバイで交渉し、バイの関係で相手の行動を理解するという世界で生きてきたんだと思いますが、全体を俯瞰し、地政学的に鳥瞰図で個別行動を読み解いていくという安倍総理の発想に触れることを通じ、新鮮な衝撃と感動を感じているようです。「安倍は話が面白いし、的確だ」と報道されたのは、安倍総理の地政学的・戦略的思考に触発されたのではないでしょうか。「どうやったらあんなにうまく付き合えるのか教えてほしい」という問い合わせが各国日本大使にその国の政府関係者から寄せられているという噂を聞きましたが、なるほどと思います。


 先日、マティス国防長官が来日し、尖閣諸島は安保条約第5条の対象下であると明言をしましたが、そのマティス氏はまさに各国の外交軍事行動を地政学的に読み解くという専門家のようです。「マティスはマッドドッグ(狂犬)と言われているけれどもそうではない。」とトランプ大統領が論評しましたが、マッドドッグとは前線においては勇猛果敢な指導者だったという意味で、司令塔としては冷静沈着で戦略的思考のできる人という評価のようです。大臣は上院の承認が必要ですが、在籍99名のうち98対1の圧倒的多数で承認され、反対の1名も「シビリアンコントロールという意味で反対票を投じたが、人間としては心から尊敬している」と述べたように素晴らしい指導者のようです。マティス長官の地政学的・戦略的分析と安倍総理のそれが重なっているために、トランプ大統領はより一層の信頼を安倍総理に寄せているのではないでしょうか。


 国会の承認を頂ければ3月上旬から日米両国の議会間・議員間の信頼関係を再構築するために超党派の訪問団が派遣されます。政府と二元外交をやるわけにはいきませんが、議員間は議員間として両国の信頼を構築しておくことは重要なことです。貿易摩擦というと1980年代の日本からアメリカへの集中豪雨的輸出が思い起こされますが、その後に輸出自主規制や米国内に生産拠点を移す等の努力により、当時のピーク時には約58%あったアメリカの貿易赤字に占める比率は現在の9%へと縮小を致しました。日本からの輸出をアメリカ国内の生産に切り替え、多大な投資と雇用の確保をしてきました。このことにより外国系企業によってなされたアメリカからの輸出のトップは日本企業によるものとなりました。合わせて外国系企業による製造業分野での雇用も日本がトップとなりました。つまり日本は既に貿易摩擦を各種努力により卒業しているのです。一方、中国はかつての日本と同様にアメリカへの輸出が激増し、かつての日本のようにアメリカの貿易赤字に占める比率の半分へと拡大してきたのです。三十数年の時を超え日米間は貿易摩擦を卒業し、日本企業はアメリカへの投資も、アメリカでの雇用や輸出にも最大貢献している国となったのです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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