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国会リポート vol.340(2017年9月4日)

 「これまでにない重大な脅威だ。」

襟裳岬の上空を越え太平洋に落下した北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けての安倍総理の発言です。金正恩はまるで心理学者のように極めて戦略的に事を進めています。グアム周辺にミサイルを撃ち込めば、アメリカが軍事行動に出る可能性はゼロではない。それに準ずる行動は何かということを探った結論が今回の発射です。少しずつ少しずつ閾値を上げながら、アメリカの武力攻撃を避けつつ、核搭載大陸間弾道弾を完成させるつもりです。(こうしている間にも核実験も強行しました。※9月3日追記)

 前回号で私が指摘した通り、米韓合同軍事演習にかこつけて発射を正当化しています。訓練をやろうとやるまいとあらゆる事象に言いがかりをつけて金正恩は実験を正当化していきます。
「挑発が連鎖を呼ぶ」と能天気なことを言っているテレビや新聞の解説者がいますが、まさにそういう発言を金正恩が誘導していることにいい加減気が付いた方がいいのです。

 これも前回指摘したように金正恩はリビアやイラクの独裁体制がアメリカ主導で崩壊させられたのは核ミサイルを持っていなかったからだと固く信じています。金王朝を続けさせるためには核を搭載した大陸間弾道弾を持つ以外に道はないと固く信じて、ほふく前進や死んだ振りをしつつ着実に前進させているのです。開発資金を止めるしかないということを関係全ての国が認識しない限り、悪魔の前進は止まりません。地政学的に言えば中国やロシアはアメリカや西側との接触点に安全保障上の政策から緩衝地帯をつくることを命がけでしていますが、北朝鮮の行動はその緩衝地帯が次第に中国の制御を離れ、アンコントロールになりつつあるという問題です。金正恩の父・金正日は遺訓として息子に「最も信用ができず、最も警戒すべき国は中国だ」と言い残していると言われています。自分の手ゴマに使っていたはずの北朝鮮がいつの間にかアメリカしか相手にしない事態になったということに、そろそろ気づくべきです。

 「最後は石油供給を止め、加えて北朝鮮の経済活動を世界の金融システムから遮断することしない」という私のかねてからの見通しは残念ながら100%正解になりそうです。

 このところ連日、空母ロナルド・レーガン艦載機の厚木基地での出航前着艦訓練の騒音で、基地のそばにある我が事務所も昼間から室内での打ち合わせも度々中断される事態です。台風の襲来で硫黄島や洋上が使えないこと、空母艦載機FA-18の岩国移設は11月と来年5月であることが北朝鮮有事と重なり、今回の事態に至りました。普天間がビルの中の飛行場であるなら、厚木基地は住宅密集地の中での飛行場です。数十年間、我が国と極東の安全保障のためと耐えてきた大和市・綾瀬市をはじめとする近隣周辺の忍耐が事の次第を理解して頂くことを願うばかりです。河野外務大臣をはじめ、外務省・防衛省と天候異変時の今後の対応について直ちに協議を始めました。空母艦載機部隊の拠点・厚木基地と常設訓練地・硫黄島との関係であったように、艦載機部隊が移設する岩国基地に対する近隣常設訓練場の建設と合わせ、その間の対応を協議中です。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

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