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国会リポート vol.425(2021年6月18日)

 G7コーンウォールサミットが終了しました。菅首相にとって国際会議へのデビュー戦でした。外交は得手ではないとの報道もなされいましたが、その内容を検証してみると菅首相スタイルの面目躍如といった場面が多々見られ、バイデン大統領にとって頼もしいパートナーの感を強くしたと思われます。

 セッションの大半は中国の強権手法に対するG7の結束に費やされました。中国が強権的な手法で新たな国際秩序を作ろうとしていることに対し、G7が結束して各方面で対峙していくという姿勢が鮮明になりました。公正な国際秩序の維持に向けて、G7が結束しその覚悟を持つべきだというアジェンダに対して煮え切らない対応をとる一部首脳に対し、時に相手の目を見据えて一喝する迫力に満ちた論陣先方がタジタジになる場面もあり、その結果結束した宣言へと導いた功績は大と言えます。守りは慎重に、一転攻めに転じたときの迫力は国内政治のそれと同様だったようです。デビュー戦での迫力は各国首脳に強烈な印象を与えたようです。自由で開かれたインド太平の維持や台湾海峡の平和と安定、両岸問題の平和的解決が G7で明記をされたことはその歴史上初めてのことであり、一時無用論が叫ばれたG7が国際社会の秩序維持の主導役として戻ってきたということです。

 開発金融に関し、融資先途上国が貸し手の中国に対する批判的な言動をした場合は即刻デフォルトとみなし、即時返済義務をかけたり、債務返済は中国を最優先する義務等、さらに驚くべきはそうした国際ルール違反の契約自体を秘密裏にする義務が課せられていることが、途上国側の告発で判明を致しました。世界最大の債権国でありながら債務削減の国際協力には参加せず、秘密裏に独自のルーを債務国に課していた、理不尽なその種の是正もG7から求められる声明となりました。

 ワクチンを外交圧力の武器として使うことは許されることではありませんが、途上国側は中国の紐付きワクチンに頼らざるを得ないという事情も受け止めなければなりません。そこでG7が資金および現物供与を通じて、今年から来年にかけて途上国に対しワクチン10億回分の供与支援を約束したことは先進国の果たすべき責任にコミット出来たと思います。途上国人口を考えれば、その数倍は必要と思われますが、まずはG7でその緒に就けたということは歓迎すべきことです。また重要鉱物資源や戦略物資たる半導体の分野でサプライチェーンのリスクに対して、協調してあたるということも時宜を得た成果だと思います。しかし気候変動では厳しい交渉を強いられました。欧 州の何が何でも石炭火力禁止政策は途上国がコストパフォーマンス上必須とする石炭火力の建設に関し、最高効率の日本製の技術が撤退した後、それに劣後する効率の中国製が市場を奪っていくというので はカーボンニュートラルを目指すうえで何の意味もありません。G7がまず範を示すべきとのひと言で、かえって環境悪化を招いてしまう手法による決着とは何ともやるせない思いですが、その点は多勢に無勢のようでした。

 生物多様性では海洋プラスチックごみへの取り組み強化も合意しましたが、石油化学製品に対する環境対応は待ったなしになっています。先般、発足することが決まった樹木の構成物質の1/3を占める改質リグニンの利活用政策の推進のための議員連盟はこの解になるものと期待しています。森林研究所と民間企業が推進するリグニンを活用した木質由来プラスチックは日本の杉由来のものが一番安定しており、強化プラスチックの性質をそっくり受け継ぎながら、生分解性つまり土に還るという特性を持っており、森林保全と産業と地方創生と環境保全を一つに結び付けるものと期待されます。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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