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国会リポート vol.426(2021年7月9日)

 ワクチン接種で混乱が発生しました。しかしこの混乱は説明の仕方で充分対応が出来るものでした。ネット報道で7月以降のファイザー社製ワクチンの輸入量が3割減り、思うような供給が出来ないかの誤解を与えたことが発端です。それが原因か、ワクチン不安が都議選に影響したと言われています。確かに3割減りますが、最初からその数字で契約されていました。元々ファイザー製ワクチンは4月から6月分として1億回接種分、加えて7月から9月にかけて7千万回分、さらにモデルナ社製ワクチンが都合5千万回分。トータルで2億2千万回分、つまり1億1千万人分が確保されていました。加えてファイザー社製ワクチンは10月以降2千万回分、つまり1千万人分。合計すると6月まででファイザーで5千万人分、モデルナと併せ9月までで1億1千万人分、10月以降の分を入れると1億2千万人分確保されています。国際基準に則り12歳以下の子どもには原則接種しませんから、それ以外全員が接種を希望したとしても充分に足りる量です。6月までの分はまだ半分しか使われていませんから、数が足りなくなるということは絶対にありません。


 問題は国が末端現場での接種と在庫量を正確に把握できないため、在庫が積み増されたり足りなくなったりする現象が生じつつあり、都道府県を通じて現場の接種と在庫の状況を把握し、調整するファインチューニングが必要になり、職域接種等大規模接種の追加申請を停止したわけです。日用品と違ってワクチンは命に係わる重要物品です。日本で無駄に廃棄されるような事態になれば、行き渡らない途上国から怨嗟と非難の声が殺到します。命を救う貴重品が無駄なく使われるように、一旦接種在庫情報の精査をしているところです。ワクチンが足りなくなるということはありません。


 先般あるシンクタンクが接種状況の推移グラフを持ってきました。結論から言えば、接種のスタートは他の先進国に劣後しますが、始まってからの接種の加速スピードはイギリスやアメリカをしのぎ、世界新記録という報告でした。当初最速でも11月いっぱいと言われていた接種完了予測は10月いっぱいが見通せる状況になり、このスピードでいけば9月いっぱいの可能性も出て来るという話でした。欧米の例でいけば2回接種率が40%を超えると新規感染者は急激に減って来るという統計があります。その時点は8月30日と予測されましたが、それも前倒し出来る可能性もあります。


 そうこうしている間にもう一つの衝撃的なニュースが入りました。コロナに市民生活と産業活動が翻弄された昨年度の税収が実は史上最高値という報告です。過去最高の税収額は2018年度の60兆4千億ですが、昨年度2020年度の税収は60兆8千億に上るというものです。その前年の10月に導入された消費税が翌年度は12か月分フルに納入されることを考慮しても法人税が伸びたことが貢献しています。財務省の補正後の見通しからも5兆円以上上振れをしたということになります。旅行・飲食・宿泊は壊滅的打撃を被りながら、一部の産業は収益を更新する等まだら模様を一過性と見るか、底力と見るか微妙なところですが日本経済のポテンシャルは感じます。菅内閣は経済を極力生かしながら感染を押さえ込むという手法を取りました。憲法に緊急事態条項が設置されていない日本は、私権制限となるロックダウンのような措置は取れませんが、公益に積極的に協力する国民性のお陰もあって本来トレードオフの関係にある経済の拡大と新型コロナ感染の抑制の絶妙なハンドリングに成功した国として将来評価をされるよう、菅総理には歯をくいしばって引き続き「一にワクチン、二にワクチン」政策を貫いてもらいたいと思います。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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