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国会リポート vol.437(2022年5月31日)

 「5泊7日で30会談」の超過密米国訪問に続き、「0泊3日の弾丸弔問」でアブダビを訪れました。UAE(アラブ首長国連邦)のハリーファ大統領が急逝され、急遽3日間だけの弔問式が発表されたことを受け、官邸から総理特使として行って欲しいと要請がありました。総理から直接電話も頂いたこともあり、快諾致しました。  UAEはアブダビ、ドバイを始めとする7つの首長国の連邦であり、サウジアラビアと並び日本の石油輸入の35%を依存している重要なパートナー国です。ウクライナ侵攻のペナルティとしてロシアからの石油輸入を順次禁止する経済制裁の発動もあり、更に重要度の増したパートナー国です。加えて日本が自主石油権益を最大保有する国でもあります。


 ハリーファ大統領の後継には、異母弟のムハンマド皇太子が、7つの首長国首脳会談で満場一致で選ばれました。私はムハンマド皇太子には、過去2度経済産業大臣として会談した経験があります。親日家であり、自己規律精神としての日本の「武士道」に関心の深い方でもあります。


 ムハンマド皇太子を高名にしたのは、2015年の演説と言われています。表に目立って出ることを控えていた皇太子はある国際会議のスピーチで、「今から50年後に石油輸出の最後の1樽がアブダビ港を出る時、国民は悲しんで見送るだろうか、喜んで見送るだろうか。悲しむ必要などない。その時には我が国は新たな手段で発展を手に入れているから。それは教育だ。教育への投資が新しい未来を開いて行く。」7年前、石油王国のリーダーが発した鳥肌が立つような感動的スピーチです。 ムハンマド皇太子の発案でアブダビの日本人学校の幼稚園にアブダビ政府高官の子弟の受け入れ枠(1割)が設置されました。先生の補充等、急遽「経産省」予算を使い対応がなされました。入園式の当日ベンツやロールスロイスで使用人に付き添われ入園して来る幼児は、入園後は園の教育方針に従い、容赦なく片付けや掃除をさせられます。使用人に囲まれ箸以外持ったことのない我が子が、使用人の作業をさせられていると知ると、親は卒倒しそうになりますが、園長は毅然として「日本人の子弟と分け隔てなく扱います」とはねつけます。数ヶ月するとその親たちは、「見違えるようにしっかりして来た」と我が子の成長に感嘆します。休みになるとその子が泣くので親が理由を尋ねると、幼稚園に行けなくて悲しい、と。


 その後、小中学校を経るとアブダビには日本の高校はないため日本留学を目指しますが、学年の開始時期の違いで引き継ぎが上手く行かないと聞き、直ちに官邸(安倍政権時)を通じ高校の受け入れを要請しました。「将来、中東の政府高官が日本語ペラペラだなんて夢のような話じゃないですか。」官邸直轄で受け入れがスムーズに運ぶ様になりました。


 アメリカからはハリス副大統領やブリンケン国務長官、オースティン国防長官等々、各国からも首脳級が相次いで訪れたため、総理に帰国報告した際、「私では力不足だったのでは」と申し上げましたが、「いや、先生が適任でした」と慰労をいただきました。行きも帰りも機中泊でTPP交渉を思い起こしましたが、そのわりに全然疲れていないと感じました。なぜなら、その前に5泊7日30会談の史上最過酷スケジュールをこなしてきたからなんだという事に気が付きました。


 

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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