インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等(3)

3. 選挙運動用有料インターネット広告の禁止等

 選挙運動のための有料インターネット広告については禁止されています。ただし、政党等は、選挙運動期間中、当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクする政治活動用有料広告を掲載することができます(改正公職選挙法第142条の6)。
 この規定に違反して有料インターネット広告を掲載させた者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされ(改正公職選挙法第243条第1項第3号の3)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。

 改正公職選挙法では、以下の有料インターネット広告を禁止することとしています(改正公職選挙法第142条の6)。

1. 候補者・政党等の氏名・名称又はこれらの類推事項を表示した選挙運動用有料インターネット広告(同条第1項)

2. 1の禁止を免れる行為としてなされる、候補者・政党等の氏名・名称又はこれらの類推事項を表示した、選挙運動期間中の有料インターネット広告(同条第2項)

3. 候補者・政党等の氏名・名称又はこれらの類推事項が表示されていない広告であって、選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした、選挙運動期間中の有料インターネット広告(同条第3項)

政党等による政治活動用有料インターネット広告

 政党等については、上記1に該当するものを除き、選挙運動期間中、当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告を認めることとしています(改正公職選挙法第142条の6第4項)。
 政党等は、現在も、選挙運動期間中、政党等のウェブサイトにリンクを張った政治活動用有料インターネット広告が認められていることに鑑み、本改正後も引き続き、現在と同様の態様で行われる有料インターネット広告については可能とする趣旨です。

選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクする有料インターネット広告が認められる政党等

選挙の種類政党等
衆議院議員○ 候補者届出政党・衆議院名簿届出政党等
参議院議員○ 参議院名簿届出政党等・確認団体
都道府県知事○ 確認団体
都道府県議会の議員○ 確認団体
指定都市の市長○ 確認団体
指定都市の議会の議員○ 確認団体
指定都市以外の市の市長○ 確認団体
指定都市以外の市の議会の議員×
町村長×
町村議会議員×

挨拶目的の有料インターネット広告の禁止告

 改正公職選挙法では、候補者及び後援団体による挨拶を目的とする有料インターネット広告も禁止しています(改正公職選挙法第152条第1項)。
 この規定に違反して有料インターネット広告を掲載させた者は、50万円以下の罰金に処することとされ(公職選挙法第235条の6第1項)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項)。

4. インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為の解禁

 インターネット等を利用した選挙期日後の挨拶行為は解禁されます(改正公職選挙法第178条第2号)。

 改正前の公職選挙法では、選挙期日後において、当選又は落選に関し、選挙人に挨拶する目的をもって文書図画を頒布し又は掲示することは、自筆の信書及び当選又は落選に関する祝辞、見舞等の答礼のためにする信書を除き、禁止されています(公職選挙法第178条第2号)。
 この規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処することとされています(公職選挙法第245条)。

 改正公職選挙法では、選挙期日後に当選又は落選に関して選挙人に挨拶をする目的をもって行う行為のうち、「インターネット等を利用する方法」により行われる文書図画の頒布が解禁されます(改正公職選挙法第178条第2号)。
 したがって、例えば、選挙期日後、自身のホームページ等において当選又は落選に関する挨拶を記載することや、電子メールを利用して当選又は落選に関する挨拶をすることは可能となります。

5. 屋内の演説会場内における映写の解禁等

 屋内の演説会場において選挙運動のために行う映写等が解禁されるとともに、屋内の演説会場内におけるポスター、立札及び看板の類についての規格制限は撤廃されます(改正公職選挙法第143条第1項第4号の2、第9項、第201条の4第6項第3号)。

 聴覚障害者の参政権保障という観点からの要望も強く、候補者の政見をよりわかりやすく伝えるための手段として、屋内の演説会場内における映写等の類の利用及びポスター等の規格制限は撤廃されます(改正公職選挙法第143条第1項第4号の2、第9項)。

 これにより、例えば、演説会において、候補者や政党のウェブサイトをスクリーンに映写しながら政策を訴える、といったことが可能となります。また、ポスター、立札及び看板は、これまでの規格制限(縦273センチメートル、横73センチメートル)を超えたものを掲示することが可能となります。

6. その他

第三者によるインターネット等を利用した選挙運動に要する支出の取扱い

 インターネット等を利用する方法による選挙運動に要する支出について、第三者は、現行の電話と同様、出納責任者の承諾なく行うことができるようになります(改正公職選挙法第187条第1項)。

文書図画に記載・表示されているバーコード、QRコード等

 文書図画にバーコードその他これに類する符号(QRコード等)が記載・表示されている場合における公職選挙法の適用については、後述の法定記載事項を除き、その読取り後の表示事項が当該文書図画に記載・表示されているものとされます(改正公職選挙法第271条の6第1項)。
 したがって、当該バーコード、QRコード等の読取り後の表示事項に選挙運動性があれば、その文書図画自体が選挙運動用文書図画となります。

 バーコード、QRコード等の読取り後の表示事項が、公職選挙法上、文書図画に記載すべきこととされている事項(法定記載事項)であるときは、公職選挙法の適用については、その読取り後の表示事項は当該文書図画に記載・表示されていないものとされます(改正公職選挙法第271条の6第2項)。
 したがって、法定記載事項をバーコード、QRコード等により文書図画に記載・表示することは認められないこととなります。

文書図画を記録したDVD、USBメモリ等の取扱い

 文書図画を記録した電磁的記録媒体、例えばDVDやUSBメモリを頒布することは、当該文書図画を頒布する行為とみなされます(改正公職選挙法第271条の6第3項)。
 したがって、例えば選挙運動用文書図画を記録したDVDやUSBメモリを頒布することは、法定外の選挙運動用文書図画を頒布する行為に当たり、認められないこととなります。