若者と選挙①「見えない死票」

2017年10月10日東海大学文学部広報メディア学科2年 猪股修平

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選挙は往々にして候補者の発言や動向が注目されるが、投票率の行方も気になるところだ。
そこで今回は投票に行く学生・行かない学生の両者に声を聞いた。

〈都内在住の清水さん「せっかく投票権があるのだから」〉


東海大学理学部物理学科2年の清水唯加さん(20)は、これまで3回の投票を経験した。
1度目は昨年7月の参院選、2度目は直後に実施された東京都知事選、そして3度目は今年7月に実施された東京都議選だ。

「最初はどのように投票するのか分からなかったので、恐る恐るといった感じ。でも、案外あっという間に投票できるんだって思いました」
と清水さんは振り返る。

今回の衆院選に投票するかを問うと「行きます」と即答。
清水さんに投票する理由を聞くと
「政治に詳しいってわけではないけど、せっかく投票権があるのだから行こうと思っています」
とのこと。関心があるというより、与えられた権利を純粋に行使しているといった様子だ。

一方で清水さんは
「どこに投票してもしかたがないと考えるのであれば行かないという選択肢もあると思う」とも話す。

「私は『候補者の言っていることがしっかりしている』ことや『公約を掲げる根拠が明確で理解できる』と思ったから投票している。そう思わないのであれば選挙に行かないことも1つの考え方としてあっていいと思う」
と言う。周りの雰囲気に流されて、勢いだけで中身のない投票をすることはあまりよくないのではないか、との考えだそうだ。

取材の最後に、政治に対して何を求めるのかを質問すると
「筋の通った『ブレない政治』を実行してほしい。選挙の前後で発言が二転三転しない事を求める」
と切実な面持ちで語った。

〈地方出身者のSさん「行かない」〉


清水さんの友人で東海大学理学部物理学科2年のS・Hさん(本人の希望によりイニシャルのみ)は、地方出身だ。現在は神奈川県内で一人暮らしをしている。
今回の衆院選について尋ねると「行かない」と、きっぱり答えた。
聞くと、これまでも投票に行ったことはないと言う。

「実家から住民票を移していないし、そもそもどう投票すればいいのか分からない」
と言うSさん。しかし、政治に関心はあるという。

「現政権に安定感はあると思う。経済でもいくらか良くなったようで、有効求人倍率が高い面でも評価できる。ただ、集団的自衛権の行使容認をニュースで見たときは『戦争は嫌だ』と思った。戦争が近づくのは絶対嫌」
と、Sさんは自らの主張を強い口調で語った。

また、若者として訴えたいことはあるかと問うと、Sさんは訴えかけた。
「今の問題を後回しにして私たちの世代にツケをまわすのはやめてほしい」

20171010.jpg ▲取材に応じてくれた清水さん(写真右)とSさん。居住地によって選挙に行くか行かないかは大きく変わる。

〈低い投票率、向上のカギは若者に?〉


衆議院選挙における投票率は下落傾向にある。

総務省によると前回の衆院選(2014年12月)では、小選挙区における投票率が戦後最低の52.66%を記録した。

ここで注目すべきは世代別の投票率だ。年齢が高い方から見ていくと

  • 70代以上...59.46%
  • 60代...68.28%
  • 50代...60.07%
  • 40代...49.98%
  • 30代...42.09%
  • 20代...32.58%

このように、若い世代ほど投票率が低いのである。
足腰が悪く投票所に行けないといった理由を考えることが出来る70代以上の高齢者でさえも平均投票率を上回っている。にもかかわらず、20代の投票率の低さは顕著だ。

18歳選挙権が施行されて初めての国政選挙となった昨年の参院選でも、10代~40代の投票率は、平均投票率(54.70%)を下回った。
(10代...46.78%、20代...35.60%、30代...44.24%、40代...52.64%)

各自治体の選挙管理委員会は期日前投票や事前の選挙告知に努めているが、投票率の向上につながっているかは不透明だ。

東海大学のキャンパスに近く、多くの学生が暮らしている神奈川県秦野市の選挙管理委員会に問い合わせたところ
「選挙が実施されることについては、ホームページや市の広報紙を通じて啓発している。また、18歳選挙権が施行されてからは20歳未満の若い世代がいる世帯に向けてハガキで投票権があることを通知している。しかし、どの程度効果があるかは分からない」
とのことで、自治体側も投票率の上昇を達成できているかは確認できておらず、手探りの状況だ。

取材したSさんのように、地方から来ている若者は簡単に投票することはできない。投票率の維持に貢献していると言われる期日前投票は、住民票のある自治体でしかできない。

住民票のある地元の選挙管理委員会から投票用紙を郵送で取り寄せ、現在居住している地域で投票することのできる「不在者投票制度」もあるが、この制度を知る学生は限られる。

筆者は住民票を現在居住している自治体に移したため幸いにも投票できるが、政治に関心がありながらも、居住地の関係や投票の仕方が分からないことで投票することのできないSさんのような若者も少なくない。Sさんのようなケースはいわば「見えない死票」である。

不在者投票制度の周知や投票を体験させる模擬選挙を実施していくことが今後のカギとなるのではないだろうか。若者の投票率向上を図ることで、全体の投票率も飛躍的に高くなるはずだ。

今回の衆院選以降、実家を出て一人暮らしをしている若者たちが投票しやすい環境を整えることが求められるだろう。

(※記事中の投票率については、総務省のHPに掲載されているデータ(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/)を参考にしました)


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