若者と選挙②「もう1つの選挙」

2017年10月19日東海大学文学部広報メディア学科2年 猪股修平

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〈22日投開票、衆院選のみならず〉


投票日まで1週間を切った衆院選は、各候補の舌戦が過熱している。それに呼応する形で、各メディアも選挙に関わる報道を拡大している。

ただ、忘れてはいけないことがある。
それは、22日に投開票される選挙が1つではないことだ。

22日には全国各地で地方選挙も同時に実施される。その数は29県で64選挙。
(出典:選挙ドットコム http://go2senkyo.com/schedule

このうち、立候補者が1人で無投票当選が決まった春日部市長選(埼玉県)のようなケースもあるが、中には首長選と地方議員選が同時に実施される南三陸町(宮城県)や玉名市(熊本県)のようなケースもある。

地域によっては衆院選だけではなく、地元の選挙戦についても1票を投じなければならない。
複数の選挙で候補者を見極めなければならない有権者の身構え方も大きく変わる。
今回は、衆院選と同時に首長選も実施される自治体に住む学生の声を聞いてみた。

〈仙台・同時選挙でより身近に〉


宮城県では、衆院選と同日に県知事選挙の投開票も実施される。県庁所在地の仙台市は筆者の故郷でもある。
市内にある選挙看板は、衆院選のものと県知事選のものとが2つ並んでいる。

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▲衆院選・県知事選両方の看板が立つ。(仙台市青葉区で、筆者撮影)

国政と県政の代表を一度に選出する投票を前に若者は何を思うのか。ちょうど投票1週間前に大学祭が開催されていた東北学院大学(仙台市青葉区)で取材をした。

経営学部経営学科3年の最上敦矢さんは衆院選に関して「新しい政党に期待している」と言う。
一方で、県知事選に関しては、不安を感じているようだ。

「7月の仙台市長選では現職知事が推薦する候補者が落選し、対立候補が市長となった。今回の県知事選でもし現職知事の続投が決まれば、県政と市政に齟齬(そご)が生じてしまうのではないか」

6年半前に起きた東日本大震災の復興も道半ばであることを意識し、最上さんは「宮城を良くする知事と仙台を良くする市長がケンカをしないでくれれば」と願う。

経済学部経済学科3年の伊藤海希(みずき)さんは、今回の選挙で初めて投票に行くという。
衆院選・県知事選と日程が重なり、2つの選挙に投票することについて問うと
「意見が反映されるか分からないが、初めて行くからには投票を通じて意思表示をしたい」と意気込みを見せた。

選挙を迎え、意識が変わったという声もあった。
教養学部地域構想学科2年のA・Kさん(本人の希望によりイニシャルのみ)は選挙権を得たことによって、自身の意識の変化に気付いた。
「今まではうるさいと思っていた選挙カーに耳を傾けるようになった」

しかし一方で

「候補者は対立候補の批判ばかり。正直(投票する思いが)萎える」
と、候補者の姿勢にやや辟易している様子だ。

仙台では、2つの選挙が同時に実施されることで、選挙を身近に感じている若者が多いようだった。

〈川崎・「選びようがない」〉


川崎市では川崎市長選が衆院選と同日に投開票される。
川崎市多摩区に住む東海大学文学部広報メディア学科3年の海田和果さんに市長選について尋ねてみた。

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▲取材に応じてくれた海田さん。今度の選挙では「質の高い投票をしたい」とのこと。

海田さんは「候補者について何も知らなかった」と言う。「市長選に注目したところで選びようがないと思った」
とのことで、どうやら自身の住む街の首長には興味がなかったようだ。

筆者が取材していると海田さんは「今からちょっと調べてみる」とスマートフォンを取り出し、操作し始めた。

しばらくすると海田さんは
「(市長選の)候補者の主張はこれまでとあまり変わらない。でも、よくよく見ると現職の市長も頑張っていたのかな」
と話した。思いがけず、この取材が市長選に目を向けるきっかけとなったようだ。

候補者について何を知りたいかを問うと
「やっぱり、若者への目配せかな。感情ではなく、論理で選挙戦を進んでほしい」

〈政治の舞台、選挙のみならず〉


仙台、川崎の両市で学生の声を聞いた。今回の取材に応じてくれた人だけを見ると、総じて選挙への意識は高いようだ。
報道は国政選挙について取り上げることがほとんどだが、地方では地方の未来を決めるもう1つの選挙があることを覚えておきたい。

一方で、危惧すべきは候補者の姿勢だ。対立候補や他党の批判にばかり徹していては、仙台のA・Kさんの言葉にもあったように有権者は「萎えて」しまう。

地域によって市民の要望はそれぞれだ。
衆院選に合わせて地方選挙を同時に実施する自治体の選挙では、地方の声を聞きとる大きなチャンスではないだろうか。

候補者には、市民と対話が生まれる姿勢が常に求められる。
政治の舞台は選挙のみならず。市民の声を聞くことも、舞台に立つ者として大前提であることを意識してほしい。


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