期待と不安の「中枢中核都市」

2018年12月20日東海大学文学部広報メディア学科3年 猪股修平

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〈「中枢中核都市」の選定、効果はいかに〉

果たして地方の血流は活性化するか――

 政府は12月18日、地方経済のエンジンとなる「中枢中核都市」を選定した。東京一極集中の是正に向けた取り組みで、選定された市はAIやIoTを用いたまちづくりの推進、交付金の上乗せ、各種規制緩和が見込まれる。中枢中核都市向けの地方創生推進交付金上限額は来年度以降1500万~5000万円程引き上げられる見通し。交付金申請件数についても従来より拡充する。その他、具体的にどのような取り組みがされていくかは来年以降明らかになる模様だ。中枢中核都市ごとに異なった取り組みが推進されれば、地方都市の魅力向上につながるだろう。

 東京一極集中は、人口過密による弊害が問題とされている。今年6月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生方針2018」では、東京一極集中の現状認識について「国を挙げて取り組むべき喫緊の課題」としている。2017年現在、東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)の人口は約3600万で、人口の約3割を占める。こうした過密状態が通勤時間の拡大、住宅価格の高騰を招く。加えて万が一東京圏で巨大災害が発生すれば、日本経済が一気に停止する恐れもある。かねてから政府が声高にする地方創生は、「地方に人がいない状況」だけでなく「東京に人が多すぎる状況」も問題視しているのだ。

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▲中枢中核都市に選定された仙台市(筆者撮影)

〈ミニ一極集中の懸念〉

 地方中枢都市に選ばれた都市では喜びの声が上がっている。新潟県上越市の村山秀幸市長は「支援の幅が広がることは大変喜ばしい」(19日付新潟日報より)。一方、一部自治体からは「ミニ一極集中が起きないか」と懸念する声も上がっている。内閣府地方創生推進事務局によると、中枢中核都市の対象範囲は

1.産業活動の発展のための環境
2.広域的な事業活動、住民生活等の基盤
3.国際的な投資の受入環境
4.都市の集積性・自立性等の機能・性格が備わっている

としている。結果として政令指定都市や県庁所在地、もしくは中京圏や関西圏の人口集中地帯に位置する都市が選定された。本当に深刻な過疎化が進む市町村はそもそも選定対象外だった。政府の思惑通り地方から東京圏への人口流出を止めることはできても、中枢中核都市の周辺自治体では今後も人口流出に頭を抱える事態になるだろう。同事務局では中枢中核都市の選定について「社会経済情勢の変化等に応じて変更があり得る」としているが、人口の少ないまちが選定される可能性はほぼないと思われる。何が実行されるかは具体的に分かっていないが、実効性のある骨組みづくりを期待したい。

〈「やりたい事ができるまちづくりを」〉

 中枢中核都市には、若者の視点を踏まえたまちづくりを進めてほしい。仙台出身の筆者は現在、東京圏の大学に通っている。なぜ東京圏に出てきたのか。専攻したい学問を学べる大学が仙台には無かったためである。周囲にも、大学進学をきっかけにして東京圏に出てくる若者が多い。地元に戻りたいかと尋ねると「地元では志望業種で働ける見込みがない」(秋田県出身者)「絶対に東京で働きたい」(長野県出身者)といった声が返ってくる。総務省によると、2017年の東京圏の転入超過は約12万人で、このうち約11万人が15歳~29歳の若者である。筆者を含め、地元でやりたい事ができない若者は東京圏に出てくるのだ。中枢中核都市には、ぜひとも「やりたい事ができるまちづくり」を進めてほしい。地方創生推進交付金が教育・雇用分野で活用されることを願う。

中枢中核都市に選定されたのは以下の82市。

北海道...札幌市、函館市、旭川市
青森県...青森市、八戸市
岩手県...盛岡市
秋田県...秋田市
宮城県...仙台市
山形県...山形市
福島県...福島市、郡山市、いわき市
茨城県...水戸市、つくば市
栃木県...宇都宮市
群馬県...前橋市、高崎市、伊勢崎市、太田市
新潟県...新潟市、長岡市、上越市
富山県...富山市、高岡市、射水市
石川県...金沢市
福井県...福井市
山梨県...甲府市
長野県...長野市、松本市
岐阜県...岐阜市
静岡県...静岡市、浜松市、沼津市、富士市
愛知県...名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市、春日井市
三重県...津市、四日市市
滋賀県...大津市
京都府...京都市
大阪府...大阪市、堺市、八尾市、東大阪市、岸和田市、吹田市、茨木市
兵庫県...神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市
奈良県...奈良市
和歌山県...和歌山市
鳥取県...鳥取市
島根県...松江市
岡山県...岡山市、倉敷市
広島県...広島市、呉市、福山市
山口県...山口市、下関市、宇部市
香川県...高松市
徳島県...徳島市
高知県...高知市
愛媛県...松山市
福岡県...福岡市、北九州市、久留米市
佐賀県...佐賀市
長崎県...長崎市、佐世保市
熊本県...熊本市
大分県...大分市
宮崎県...宮崎市
鹿児島県...鹿児島市
沖縄県...那覇市

(選定対象は主に県庁所在地、政令指定都市、中核市、旧特例市で、東京圏と昼間人口が夜間人口よりも少ないベッドタウンは対象から除外された。大阪府が7市と最も多く、5市の愛知県が続く)

参考文献:
  • 6日付日本経済新聞電子版「地方振興へ『中枢都市』政府、年度内に選定」
  • 7日付河北新報朝刊「中枢都市候補80市公表へ」
  • 19日付同朝刊「中枢中核市仙台など82市」「地方創生見えぬ成果」
  • 19日付新潟日報モア「中枢中核市に新潟、長岡、上越」
  • 20日付産業経済新聞「中枢中核都市の交付金拡充 『先駆型』上限5千万増」 
  • 内閣府地方創生推進事務局「中枢中核都市について」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/chusuchukaku/houdou.html
  • まち・ひと・しごと創生基本方針2018

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