萩生田大臣に聞きました(Vol.2)

2021年05月25日Vote at Chuo!!

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はじめに

 「選挙の高齢化」という表現には、私は3つの意味があると思います。1つ目は選挙に出馬をする「立候補者」の高齢化、2つ目はその中で当選を果たした「議員の高齢化」、そして3つ目は実際に投票を行う「有権者」の高齢化です。前回のVol.1では、特に「議員の高齢化」と「有権者の高齢化」に注目し、萩生田大臣から様々なお話を伺いました。

 Vol.1でも触れたように、「議員の高齢化」について萩生田大臣は、こうした問題は第一線に立つ高齢な政治家がテレビで多く映ることによる「イメージ」に過ぎず、ご自身の初出馬の頃に比べると、日本の議員はむしろ「若返り」をしていて、議員の高齢化については頷くほど感じていないとの見方でした。その一方で、「有権者の高齢化」については萩生田大臣も懸念を抱いており、この問題に対して大臣は「負のスパイラル」、具体的には⑴老年層に比べて若年層の投票率が下がる、⑵それに従って「お年寄り向き」の政策が優先される、⑶こうした政策に若者が失望感を感じて投票率が更に下がる、という悪循環が生まれているのではないか、との考えを示しました。

 そこでVol.2では「有権者の高齢化」の大きな要因となる、「日本の若者が選挙に行かない理由」について深く掘り下げていきます。

「若者が選挙に行かない理由」について

萩生田大臣の考える「若者が選挙に行かない理由」とは

 萩生田大臣からこんな見方が出されました。

多分皆さんの問題意識は、「じゃあ何で若者は選挙に行かないだろう、行くべきなのに」というものだと思います。私が無理もないなと思うのは、今の日本はコロナの中でものすごく大変ですよ、不安な気持ちを皆さん持っていると思うけど、じゃあ一昨年どうだったのかと言えば、色んな課題はあるにしても、「明日自分は生きているだろうか」とか、「明日、明後日、自分は元気でいられるだろうか」って心配する大学生はきっと誰もいなかったと思います。

すなわち、世界中の同じ年齢から見たら、極めて恵まれた環境に日本って国があって。色々細かい不満や不安はあるかも知れないけど、じっとしていられないくらいの不安っていうのは多分多くの大学生は持っていなかったと思います。例えば、皆さん健康診断とか行かないですよね?やっぱり私も若い時は健康のことなんてあんまり心配しませんでした。要するに不安ではないから。自分にそのことが降りかかると思っていなかったですしね。だけど、段々年齢が上がると、「来年元気でいられるのか?」とか、「血圧は大丈夫なのか?」って気になっていきます。まさに「政治」も同じで、その気(持ち)に対して答えを出してくれる人達(=政治家)が地方から国までいるので、高齢者の人達の方がやっぱり熱心に投票に行くってことになってしまうのだと思います。

―つまり、「若者には不安がないから」投票に行かないということですか。

今は(コロナ禍なので)あると思いますよ。だけど、要するに「明日、日本がどうなるのだろうか」とか、「明後日、自分はどうなるのか」というような差し迫った不安は、多分この国の若い人達は持っていないと思いますね。1人1人の意見は違うかも知れませんが。したがって、自分が行動を起こさなかったら自分を守れないみたいな危機感っていうのは、今のコロナは別ですけど、たぶん無かったと思うので。そういうことがやっぱり投票に(顕われていて)。簡単に言えば、「俺1人行ったって変わらないよな」とか、あるいは、「俺1人行かなくても変わらないよな」っていう、その「ある程度の満足感」というのが日本の場合はあって。それが投票率を下げてしまったり、若い人達が行かなかったりという、そこに繋がっているのではないかなって私は思います。

 ここで大臣は、現在のコロナ禍における若者、特に大学生の不安の一つとして「授業のオンライン化」を挙げました。実際、萩生田大臣のところにも、対面授業の復活を望む声や、開いていない図書館の使用料を払わされ続けていることへの不満の声など、オンライン化に伴う学生達の「SOS」が多く届いているとのことでした。昨年度はこうしたオンライン授業の結果、地方から一人で上京したにも関わらず、朝から夕方までパソコンの前で授業を受けている大学生が圧倒的にいる事なども指摘し、大臣は次のように述べました。

こういう事(コロナ禍における授業のオンライン化)が起こると、自分にも(不安が)降りかかるじゃないですか。仮に「大学は50%以上対面をやるべきだ」ということが選挙の争点だったら、多分大学生の皆さんは選挙に行くと思います。

 つまり、若者は自身に対する直接的「不安」が選挙の争点であれば投票に行くのではないか、というのが大臣の考えだと私は考えました。萩生田大臣は「若者が選挙に行かない理由」を最後に次のようにまとめています。

すなわち、一つは「安心」、安心っていうのは「ゆるやかな安心」ですね。もう一つは、「諦め」。私はこの二つを若い人達が抱いていることが、投票行動に繋がらない原因じゃないかなと思います。だから、自分に直接関係のあることや、自分達が動くことで変えたい、変わることがあるのだとすれば、大きな秘めたる力を(若者は)持っているはずです。

萩生田大臣の考える「若者が選挙に行かない理由」を聞いて

 萩生田大臣の意見は非常に興味深かったです。私なりに大臣の考えをまとめると、日本の若者は他国と比べて、差し迫った不安のない比較的恵まれた環境におり(=安心)、現状に概ね満足しているので、「自分が投票に行っても変わらない」という当事者意識の低下(=諦め)が発生するのではないか――ということです。ただ、こうした分析は、私自身が考える「若者が投票に行かない理由」と異なるものだということに気づくとともに、率直に言って疑問に感じました。大臣が述べたように、若者の投票率が低い理由は、本当に若者に不安や不満がないからなのでしょうか。また、若者は差し迫った不安があれば投票をするのでしょうか。確かにそういった側面もあるかもしれません。経済規模や国内情勢を鑑みると、日本は他国よりも恵まれた国だと言えるでしょう。しかし私は、日本が恵まれた国であることと、若者が現状に満足することは繋がらないのではないかと感じました。内閣府の調査では、日本の若い世代(10代~30代)で自国の社会へ満足している割合は4割に届いておらず(注1)、NHK調査では、18・19歳の60%、20代~30代の70%以上が政治に不満を持っているという結果が出ており(注2)、大臣の意見とデータとで齟齬が生じています。さらに、自分自身に満足している割合も、20~29歳では4割程です(注3)。若者が現状に満足しているのかという点は、今後も突き詰めていく必要性を感じました。また、若者が現状に満足をしていると仮定して考えても、どうしてそのことが投票意識の低下を招くのか、私個人としては繋がりが弱いように感じました。勿論大臣の見解も若者が投票に行かない様々な理由の一つだと思いますが、若者は「差し迫った不安」によって投票行動を起こすという見解には違和感があります。大臣の見方に立った場合、若年層の投票率が高い国の若者の一定数は、「明日自分は生きているだろうか」といった生死の不安や、「明日この国はどうなるのだろうか」といった「差し迫った不安」に晒されながら生活を送っているということになります。決してそういうことだけではなく、若者の投票率が高い国では、例えば「義務投票制」のような法制度や、先進的な主権者教育などが要因となって、若者が「社会に満足しているのか」とか、「差し迫った不安を持っているか」とは関係なしに、自発的に投票へ行くシステムができあがっているのだと考えていました。いずれにしても、コロナ禍で行われるであろう次期衆議院選挙の投票率に若者自身の「不安」がどのように反映されるのか、しっかり見ていきたいと思います。

(注1)内閣府ホームページ
特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~
(注2)NHK放送文化研究所
18歳選挙権 新有権者の意識と投票行動(pdf)8p
(注3)内閣府ホームページ
子供・若者の意識に関する調査 (令和元年度)(pdf)13~15p
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