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国会リポート vol.349(2018年2月15日)

 「兄さんは知らないんだ。」「兄さんが知らないわけないだろう。」でお馴染みの仮想通貨を取り扱う取引所の一つ、コインチェック株式会社から580億円相当の仮想通貨が何者かによって収奪されました。コインチェック(株)は金融庁が認定している取引所ではありませんので、そのCMを流すことを躊躇していたテレビ局もあったようです。しかし問題は究極のセキュリティシステムと言われているブロックチェーンからなぜ盗むことが出来るのかという疑問です。コインチェック(株)はインターネットと切り離して保管しておくべき仮想通貨をインターネットに繋いだままで、しかも、これを移動させる秘密鍵を一つだけにしていたようです。


 コインチェック(株)の取引作業は簡略化されますが、セキュリティはその分落ちるということになります。それはさておき、ブロックチェーンシステムがその取引過程を、参加するコンピューター全てで共有しており、それを改ざんしようとすれば、無限の手続きを要するという性格上、盗んだ仮想通貨をリアル通貨として使用するのは不可能なはずです。コインチェック(株)のセキュリティの甘さとブロックチェーンのセキュリティの鉄壁さは分けて考えた方がいいと言われますが、収奪の先を追う大規模なチームが編成されず犯人が特定できないのであれば、ブロックチェーンそのものの信頼性を毀損することになりかねません。特に国をまたいで、千種類もあると言われている仮想通貨間を移動していく攪乱戦術を取られると厄介なことになりそうです。どんな仮想通貨窃盗も必ず特定できるという事が重要です。


 仮想通貨をはじめとする「価値」のインターネット的移送手段であるブロックチェーンは第二のインターネット革命と呼ばれています。インターネットは世界のあらゆるところに瞬時に大量の情報をほぼ無料で届ける事ができるという革命を起こしました。そのインターネットには二つの欠陥があります。一つは信頼性が低いという事。二つは価値の送付が出来ないことでした。ブロックチェーンはインターネットの「出来ないこと」を可能にする革命です。のはずです。革命は時に犠牲を伴いますが関係者にはぜひ無血革命を成功させ、私たちの様な素人にもわかりやすく「鉄壁の信頼システム・ブロックチェーン」と「莫大な価値の安易な流出」との関係を説明して頂きたいと思います。


 さて、今国会最大の法案は労働基準法改正をはじめとする「働き方改革」に関する法案です。過度の長時間労働が引き起こしたとされる自殺事件を契機として日本の働き方を見直そうという改革です。過度の長時間労働を罰則をもって禁止する一方で、時間と成果との関係が薄い職種では、より自由な働き方を制度化する、の二本柱です。長時間労働規制を評価する人たちの中にも、自由な働き方「高度プロフェショナル制度」を否定する人たちがいます。労働基準法の設計は本来、工場のラインで「労働時間に比例して生産量が拡大する」という発想の下にできている法律です。人工知能やブロックチェーン、はたまた、バーチャルシステムがリアルシステムを傘下にしていく時代に数十年前の働き方を基本とした構成に縛られていけば、現実と労働法制の乖離が起きます。それに対処しようとするのが今回の法改正の二本目の柱です。


 グーグルが地球をすっぽり包む情報吸収システム網を作り、世界の森羅万象、あらゆるデータを集積させ、そこから更なるビジネスへと繋げていく時代に相変わらず高度成長期のライン製造業型労働法制のままではとても世界の変革について行くことはできません。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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