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国会リポート vol.440(2022年10月4日)

 安倍元総理の国葬が荘厳な雰囲気の中、整然と行われ、岸田総理や菅前総理の弔辞は心に染みました。菅前総理は2人の出会いから2度目の総裁戦出馬への説得、そして没後の思い、その語らいは彼にしか出来ない涙を誘う素晴らしいものでした。葬儀で普通起こることは少ない拍手は外国人招待者席から起き、すぐに館全体に広がり、いつまでも止みません。


 武道館の外の一般献花には何キロもの列が続き、デジタル献花には50万人が参加をしたと報じられました。サイレントマジョリティの本当の姿を見た気がします。国会周辺では国葬反対のデモや安倍元総理を貶める行為がありましたが、死者への敬意、なかんずく生命や人生を賭けて国益に貢献した者への敬意は世界に共通する文化であり、本来は日本の美徳であったはずです。


 先日、サイバーセキュリティの関係者から「案件によってはツイッターの発信及び拡散情報の35%は緊張関係にある国からの工作と思われる」との報告がありました。安全保障の分野が広がり、サイバーセキュリティが国家安全保障の重要な分野になっています。サイバー攻撃でまず狙うのはインフラの機能を麻痺させることです。電力、通信、水道等を麻痺させれば従来の軍事行動はたやすく成果を上げられます。


 次に重要なのはインフルエンス・オペレーション(世論誘導)です。インフルエンス・オペレーションの典型的なやり方はその国をおとしめる様なフェイク世論を作り拡散し、対象国を戦意喪失に陥らせることです。相手をおとしめる書き込みをし、それを拡散し、あたかもそれが世論であるかのような錯覚を国民に起こさせ、そちらに国民の考えを寄せていくことです。この種のサイバー空間での世論誘導は2020年に81ヶ国で確認されているとのことです。一方、サイバー空間で世論誘導する相手を機械学習により特定する技術も開発が進んでいるとのこと。技術開発が民主主義の破壊を食い止めてほしいものです。


 さて、10月3日から12月10日までの日程で臨時国会が開催されます。今国会の柱は大型補正予算と区割り法案になります。いわゆる真水は15兆だ、いや30兆だと言われていますが、大規模になることは間違いありません。経済安全保障で言えば、日本の技術的優位性を確保するための安全保障基金は2,500億円が確保されていますが、骨太方針には5,000億を目指すと明確に記載されており補正予算での対応が必須です。重点4分野、つまり宇宙・海洋・サイバー・バイオにおいて日本の優位性を確保するための研究開発基金です。通信衛星コンステレーションや量子センサー等安全保障と民生にまたがるデュアルユース(双方向活用)は国民生活の向上と安全保障上の抑止力になっていきます。また重要物質について、脆弱性の洗い出しと強化策にも新たな基金設置が必要になります。


 加えて半導体戦略は10年間で官民合わせて、少なくとも10兆円の投資が必要になります。さらには自動運転や再生可能エネルギーによる電力供給の乱高下の平準化を図るためのバッテリー開発も兆円単位の投資資金が見込まれます。


  財政再建の縛りを当初予算にかければかけるほど、補正の規模が大きくなります。さらに防衛費を現在の1%強から2%近くへ拡充していくとの方針は、ロシアのウクライナ侵攻後のいわゆるEU標準に倣ったものですが、EUと異なり日本は中国・北朝鮮・ロシアという3つの強権国家、核保有国家と隣接している世界で最もリスキーな国だという自覚をしなければなりません。台湾海峡有事になれば、供給遮断を受ける台湾からの半導体のシェアは世界の6割にあたるという現実に真剣に対処する準備を急がねばなりません。熊本のTSMCは施工事業者が3交替24時間体制で工事し、2024年中の生産開始を目指しています。半導体の開発や製造支援をする米国CHIP法はそんな危惧も想定している法律のようです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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