2018年回顧 「防災」という作法
2018年12月10日東海大学文学部広報メディア学科3年 猪股修平
〈地震に豪雨・・・災害でおよそ450人が死亡〉
2018年もすでに師走。平成最後と言われた今年を振り返ると、自然災害の印象が強い。
2月は福井県を中心に豪雪の被害が相次いだ。福井市の積雪は130センチを超え、1981年の「五六豪雪」以来37年ぶりの記録だった。
6月と9月には大阪府北部地震(最大震度6弱)、北海道胆振東部地震(同7)がそれぞれ発生。都市の混乱と大規模な停電から、地震大国日本の穴を見せつけられた。
夏は命を脅かすほどの猛暑となり、7月23日には埼玉県熊谷市で41.1度を観測。国内観測史上最高気温を5年ぶりに塗り替えた。総務省消防庁によると、今年5月から9月にかけて160人が熱中症で死亡し、救急搬送の数も約9万5000人に及んだという。
そして7月の西日本豪雨、さらに9月には25年ぶりに「非常に強い勢力」で日本に上陸した台風21号が襲来。風と雨と土砂が日本列島を襲った。
今年の一連の災害で、およそ450人が死亡したとみられている。
筆者は留学中の韓国で知人から興味深い声を耳にした。「韓国から見て日本は圧倒的に災害の多い国である」。言われてみれば確かにその通りだ。韓国における自然災害は台風くらいである(まれに中規模の地震も起きるが)。日本海を隔てただけで、どうしてこうも災害が多くなるのだろう。
〈「防災省」議論、先行きは不透明〉
今年9月にあった自民党の総裁選では、安倍晋三首相の対抗馬だった石破茂氏が「防災省の創設」を提唱していた。石破氏はかねてから、米国の連邦緊急事態管理庁(FEMA)のような専門機関を設けることに意欲を示していた。FEMAとは防災から災害対応までを一元的に担う米政府機関である。日本では内閣府に防災担当部門があるものの、内容は普及活動や防災計画策定が中心であり、実際の災害対応には各省庁の担当部門が当たる。縦割り行政の影響で、国民や地方公務員が省庁間をたらい回しにされる事例も少なくない。災害対応を一括に担う省庁があれば、初動体制の改善や「どの窓口に行けばよいかわからない」といった問題の解消も期待できる。7月に札幌市で開かれた全国知事会議でも、防災省の創設を求める提言がまとめられた。相次ぐ自然災害を背景に、防災を一括する省庁へのニーズが高まりつつあるようだ。
しかし、政府は防災省創設について消極的な姿勢を見せている。2015年には危機管理の在り方に関する副大臣会合で「新機関を直ちに設置する必要はない」と結論付けた。また、菅義偉官房長官は7月26日の記者会見で「大切なのは国と自治体が災害発生時、適切な役割分担の下で早期復興に取り組む態勢を整えることだ」とした。安倍晋三首相は「防災省をつくる考え方も排除せず、よりよい防災を考えなくてはならない」としているが、近々防災省についての議論が深まるかは不透明である。ともあれ、災害時の迅速な対応を望みたい。「想定外」はもはや許されない。
〈「防災士」15万人突破 災害時の期待〉
一方、行政に頼るだけでなく、自ら防災に取り組む「自助」の姿勢も肝心だ。
先月末、「防災士」の資格取得者が15万人を突破したことが明らかになった。防災士とは、日本防災士機構が認証する資格である。平時は避難訓練のリーダーや防災啓発活動の担い手に、災害時は避難誘導や初期救助の役割を期待される。最近では地方議員や自治体職員をはじめ、学生から高齢者までの幅広い層で資格取得者が増えている。筆者も今年3月に資格を取得した。救命講習や災害対応についての座学を受講すれば、誰でも防災士になれる。
災害が相次ぐ中、防災知識を持った人材が重宝されていくだろう。防災士の存在感は、今後ますます大きくなるはずだ。
私たちが住んでいる日本は豊かな自然と四季に恵まれている反面、災害大国でもある。日ごろから防災意識を持つことが、この国に住む者の「作法」かもしれない。