ワクチンパスポートにおけるマイノリティって? 第1部

2022年04月02日フェリスチーム

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第1部 ワクチンを"打てない"

2021年12月20日、デジタル庁は「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」を公開した。
(https://www.digital.go.jp/policies/posts/vaccinecert

これは日本政府が公式に提供したアプリで、日本国内用と海外用の新型コロナワクチン接種証明書を取得することができるものである。これまで書面での発行はされていたものの、今回の電子版での交付により、今後接種証明書がさらに普及すると考えられる。

「新型コロナウイルスワクチン接種証明書」は「ワクチンパスポート」とも言われ、当初海外渡航に必要なパスポートを持っている人を対象にしているものであった。しかし、イスラエルでは飲食店・ジム等の利用の条件としていたり、日本でもイベント等の参加の際に証明書を確認する等、海外渡航以外の場面でのワクチンパスポートの活用が進んでいる。

このワクチンパスポートの活用に関して、これまで賛否が議論されてきたことは皆さんもご存じかもしれない。日本で今後活用が進むと思われる「ワクチンパスポート」について、今回は持病によりワクチンが接種できない方と弁護士の方に取材を行い、その利用について考えてみた。

第1部では、筋痛性脊髄炎(慢性疲労症候群)によりワクチン接種が出来ないという神奈川県在住の会社員 木田祐輔さんにお話を伺い、ワクチンパスポートの活用について、"ワクチンパスポートが持てない場合"という視点で議論を進める。

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インタビューに答える木田さん(下)

◉周囲からの反応

木田さんの勤める会社では、ワクチンを打つ・打たないの選択は個人の判断の問題であり、それを公にしたり強制したりする必要はないとしている。その為どのような状況の人に対しても偏見を抱くことなく、理解があり、木田さんは不自由さを感じることなく仕事を全うされている。インタビュー中「打つことも打たないことも自由である。自身で感染症対策を行うことが重要だ。」との発言に、木田さんの注意力の高さを感じるとともに、一層緊張感を持つことが出来た。ワクチンに慢心するのではなく、常日頃から意識して感染症対策を行うことが何より自身や周りの人を守ることに繋がると感じた。

◉個人の選択と日常の制限と

木田さんは、現段階のワクチンパスポートの使用によって何か大きな不自由さ、不公平さを感じたことはないそうだ。しかしながら、今は店舗の割引や特典といった範囲にとどまっているものの、今後スーパー等の日常生活に欠かせない店舗への入店制限等の重度な制限を行うようになった場合には、"打てない・打たない"人たちの生活が揺らいでしまう。陰性証明書のような代替案で対処は可能であるが、海外で行われているようなワクチンパスポートによる行動制限は一部の人の行動を縛ってしまうだろう。

木田さん自身はワクチンを接種するという選択を持病のため選ぶことはできなかった。しかし木田さんはワクチン接種については"個人の選択"であると言う。現段階でワクチン接種がどのような効果を持っているのか、その反面どのようなリスクがあるのかを個人で判断し、その上での選択であるためそれは強制することのできない自由なものであると、木田さんは考えている。

だとすれば、木田さんがワクチンを持病のため打てないことに対し、SNS上で差別的な誹謗中傷の書き込みがあったが、こうした事はあってはならないし、打つことも打たない(打てない)ことも非難されるべきではない。ワクチンパスポートの導入に関して、打たない選択肢が認められた上での使用法を今後考慮する必要がある。自由であるべき個人の選択とそれによる日常生活への制限は、このコロナ禍では"しょうがない"としてしまっていいのだろうか?もっと少数に光を当てた議論が必要になると思われる。

◉今後の展望・期待

最後に、私達(読者)が出来ることを訊ねた際、木田さんは、「健康であることの有り難さを忘れないで」と強く訴えていた。木田さん自身、病気になるより以前、健康であることを意識したことはほとんどなかった。しかしながら、いつ、誰が病気や事故に合うかわからないのが常である。これは何もコロナに限ったことではない。一体何人の人がこのことを意識して過ごしているだろうか。今日もまた、何事もなく一日を終えられたことが何よりの幸せであると気づいてほしい。

更にこの記事を読んでくれた方々がコロナに対する正しい知識を得、その上で責任をもって自身の行動を選択することを願っている。


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