社会運動の具体例
2022年12月23日田原 美優
「私は社会運動をしています。」こう言われて、その人が具体的に何をしているのか想像できない、あるいはデモや署名以外のことが思い浮かばない方が多いのではないかと思います。また、私は実際に社会運動をしているのですが、活動形態が批判されることや活動への参加者がなかなか増えず悩むことがあります。その度に、日本では社会運動についての知識があまりにも不足していると感じます。
この記事では、最近話題の太陽光発電設備の設置義務化を後押しするために私が行ったことを具体的にご紹介し、社会運動の中身を皆さんにのぞいてもらいたいと思います。太陽光パネル設置義務化の内容にはあまり立ち入らないので、難しい内容と思わず、リラックスして読んでいただけたらと思います。
東京都で進む太陽光発電設備の設置義務化
12月15日、東京都議会で、新築住宅等を対象として太陽光発電設備の設置を義務づける改正環境確保条例が可決されました。東京都の「太陽光ポータル」というページで、制度内容や意義について短くまとめた知事メッセージや、代表的な質問への回答を見ることができるのでぜひご覧いただきたいです。以下では、太陽光発電設備の設置義務化に賛成の立場である私が行ったことを3つご説明します。
東京都太陽光ポータルhttps://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/solar_portal/index.html
誰でもできる簡単アクション、パブコメ
今年の5月から6月にかけてパブリックコメント(パブコメ)が募集されていました。太陽光発電設備の設置義務化を含む条例改正案について、東京都が一般の人の意見を募集していたのです。スマホやパソコンで簡単に意見を送ることができます。私は「太陽光発電設備の設置義務化に賛成です。」という趣旨の意見を送りました。また、一般市民などに向けパブコメを書くよう呼びかけを行いました。
東京都はこのパブコメの結果を公表していて、3779通の意見が集まり、そのうち56%が太陽光発電設備の設置義務化に賛成、41%が反対で、賛成派が上回りました。パブコメの結果は条例改正を決定的にするものではありませんが、後押しすることは間違いありません。このことを確かめるには、もしもパブコメが少ししか集まっていなかったら、もしも反対派が上回っていたら、と考えてみることが有効です。
パブコメが少ししか集まらないということは、条例改正について人々への周知が不十分ということです。人々が知らない間に条例改正を行うのは良くないことなので、条例改正のスピードは遅くなってしまうかもしれません。また、太陽光発電設備の設置義務化について反対派が上回っていることを無視して条例を改正することも難しいと考えられます。義務化を進めたい環境局や議員のモチベーションが下がることもあり得ます。このように考えてみると、社会運動の中心にいる人たちが、一般の方向けに条例改正案をわかりやすく説明し、パブコメを書くよう呼びかけること、それを受け人々が実際にパブコメを書くことが重要であることがわかります。
都議会議員に電話・メール
議員に電話やメールで直接意見を伝えられるということをご存じですか。人によってはかなり勇気のいることですが、こちらも有効なアクションです。 太陽光発電設備の設置義務化に賛成の都民が、賛成を示す陳情を12月の都議会に提出していました。その陳情提出に合わせ、義務化に賛成するか判明していない都議会議員への電話・メールアクションが呼びかけられていました。義務化賛成陳情への賛否と、反対ならばその理由を聞き、陳情に賛成してほしいということを伝える電話またはメールをするのです。私も地元の立川市出身の都議会議員二人に電話をしました。活動家の中には議会当日まで何度も電話をかけて説得をしていた方もいらっしゃいました。
賛否を確認することで、どの会派、どの議員に重点的に働きかければよいかがわかります。また、反対を表明する議員にはその理由を伺い、議員の疑問を解消して説得することが必要です。そして何より、賛成してほしいと思っている人がたくさんいることを電話やメールで示すことはとても重要です。都民の代表者である都議会議員は、都民が要求していることを知り、それを議会で求めるという役割をもっているからです。また、都民以外の人が電話やメールをすることにも意味があります。他の地域の人が注目するぐらい重要な政策判断なのだというメッセージになります。実際に、東京都でこの義務化が実現するかどうかは、他の地域でも同じような取り組みが成功するかどうかにとって重要だったと思います。
結果、主要5会派のうち、条例改正に反対したのは一つだけでした。この結果に電話・メールアクションがどれぐらい影響したのかは私にはわかりませんが、当初太陽光発電設備の設置義務化に反対的な議員がいると言われていた会派でも、最終的に賛成してくれたところがありました。もしかしたら、電話やメールが後押しした部分もあるのではないかと思います。
記者会見も一つのアクション
最後に紹介するのは記者会見です。太陽光発電設備の設置義務化に賛成を表明する記者会見を都庁で開きました。企業、学者、都民が連携して開催したものです。私もこの記者会見に参加させていただき、都民としての意見を述べました。他にも、記者会見では義務化の意義や批判への応答を行いました。
私は専門的なことは言えませんが、それでも私が記者会見に出席した意義はあったと思います。太陽光発電設備の設置義務化は難しい話になりやすいので、人々の関心を集めづらいです。そのようななか、記者会見の発言者の顔ぶれのなかに私のような一学生がいることは、人々が関心を持つ一つのきっかけになると思います。また、専門家でない人も議論に参加してよいのだということをアピールすることにもなります。さらに、私が所属している運動団体にとっては、メディアの方に団体の存在を知ってもらったり、連絡先を交換したりするというメリットがありました。「団体を知ってもらう」というのも社会運動にとって重要です。
おわりに
この記事では、読んだ方に社会運動への理解を深めてもらえるよう、具体的な活動内容とその意義をご紹介しました。私は、社会運動をしている人への世間の目はどちらかというと冷たいと感じています。この記事が、そうした日本社会を変えることにほんの少しでも貢献したら嬉しいです。この記事でさえも私の一つの運動というわけです。社会運動は意外と身近に転がっているものだと思います。