フェリス女学院大学と"女性活躍" その2

2024年11月29日フェリスチーム2024

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その2 ~学長インタビュー〜

はじめまして!フェリス女学院大学の杉原奏音です。
第一部では、倉賀野人事課長への取材を取り上げました。そこでは、フェリス女学院大学の女性管理職の現状を把握し、導入されている制度について深く見ることができました。

第二部では、今年度フェリス女学院大学の学長に就任された、小檜山ルイ学長への取材を取り上げます。
小檜山学長には、国内で唯一*、学長・副学長すべてが女性になった経緯やフェリス女学院大学生の卒業後の"女性活躍"をどのように考えていらっしゃるのか、また今後の女性活躍の展望などについて取材させていただきました。
*日本私立学校振興・共済事業団が実施する「学校法人基礎調査」、令和5年度学生・教職員数等調査集計結果(2024年2月公開、4年制大学のみ)による

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フェリス女学院大学小檜山ルイ学長

―今年度から国内唯一である学長・副学長(2人)すべてが女性になった経緯やその思いについてお聞かせください。

 フェリスでは学内の教授会の中から選挙で学長が選ばれるのが通常ですが、私がフェリスの中高の卒業生ということもあって、理事会から推薦され、教授会での選挙を経て、フェリス女学院大学の学長に就任しました。
 副学長は、学長指名のポジションですのでフェリス女学院大学での経験が長い先生方と相談して、候補を出していただきました。その結果、二人とも女性になったという経緯があります。

―その思いについて、より詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

 フェリスの学長は歴代、男性が務めてきました。今回学長になるにあたり、"女子大なのだから、女性のリーダーシップを見せなきゃいけない"という使命感はありましたね。学長、副学長合わせて3人を女性にして、女性の団結力、リーダーシップを明確に示していきたいと思いました。上に立つ人は男性が多く、男性なりのリーダーシップの型はこれまでにある程度示されてきましたが、女性がリーダーシップをとることは、フェリスでは初めてです。女性は仕事を分担しようとするし、独裁的に進めていくというより、協調して事柄を進めていく特性があるのではないでしょうか。そういった形を見せていきたいと思っています。

―フェリス女学院大学の女性管理職が4名ということですが、それについてのお考えをお聞きしたいです。

 事務局の課長以上の人数については、もっといて良いと思います。課長以上の職に女性が就いてほしいし、部長もいずれは女性にやってほしいと思っています。
 女性は、大学でも働き、家に帰ってもまた働くことが多い。家の中の様々な細かい作業をしてくれる存在が自分以外にいないから、女性にとって働きやすい環境(時間通りに帰れる、加重な負担がかからない)が望まれると思います。課長以上になると大きな責任を背負うことになり、労働時間が増え、様々な意味で働き続けづらい状況が起こります。
 これはフェリスに限らず、他大学、他の職場でも起こるわけです。だから、むしろ管理職になりたくないと思う女性が一定数います。社会構造として、子育てをしたり、家事をしたりといった、重要な仕事が女性に偏っている現状があることを残念に思います。外で働くためには、こうした私的空間における労働が不可欠ですが、その部分の多くを女性が担っています。けれども、職場で責任のあるポジションを打診されたら、ぜひ受けてほしいと思います。やってみる気持ちを持ってほしいです。
 年を重ねると、子育ても落ち着きます。ところが、今度は、親の面倒を見るという課題も出てくる...管理職に二の足を踏んでしまう女性が多いのは、こうした事情があると思います。これは、ここ(フェリス)の問題だけではなくて、社会問題ですね。家事を労働とみなして、男性を含め、家族と分かち合える社会ができれば良いなと思います。

―お話しされていたように、現実問題としてやはり女性が活躍することは難しいと思いますが、その状況を打破して男女平等に働くためには、どのようなことが必要だとお考えになりますか。

 男性の働き方を基準とするのではなく、女性の働き方に合わせていくことが必要だと思います。もちろん現段階ですでに男性が育休を取ったり、女性が育休を約1年間取ったりできる制度はありますが、これもまだいびつなんですね。長い間職場を離れるということは、キャリアにとってはマイナスです。育休には給付金がありますが、職場での欠員まで雇用主が埋めてくれるとは限りません。子どもを持たない人が、育休を取っている人の分も働くなら、不公平感が生まれるのは、たぶん防ぎようがない。
 女性の産前産後の約三か月の休暇は、女性が取ることが絶対必要だとして、現行の制度を前提とするなら、その後の1年を、どうするかが重要だと思っています。男女が例えば、前半の半年を女性が休暇を取り、後半の半年を男性が休暇を取るような体制を考えるべきだと思います。半年たったら、女性は働きに出る。そして、その時は男性が必ず休暇を取り、家事を担わなければいけない、というような制度ですね。
 雇う側にとっても、女性が途中でやめることは非常に大きな損失です。能力のある女性が、男性と同じ土俵に立って働けるような環境を作ることが必要だと考えています。

―フェリス生の卒業後の女性活躍について、学長が考える卒業後の女性活躍の在り方や今後の大学の運営方針などがありましたら、お聞きしたいです。

 女性も経済的に自立しなければならないと思います。派手な職業に就くということではなく、自分に適性のある、長く続けられる仕事を見つけてほしいです。好きなことが必ずしも仕事にできるわけではないけれど、自活を支えるものを持つことは、女性の自由選択を確保するために大切だと思います。
 将来活躍する際には、大学の中で自分の好きなことを見つけて、職業に直結するのが理想的ですが、なかなかそう上手くいくものじゃない。だから、一方で好きなものを大事にしながら、他方で自活という局面を別次元で考える必要があると思っています。自分が生きていくためのお金を稼ぎながら、一方で好きなことを大切にして、もしかしたら、それがいつか今やっている仕事と結びつくかもしれないという可能性を模索しつつ、キャリアを積んでほしいと思っています。それが活躍することだと考えています。

―今年の6月22日に行われた、『ジェンダースタディーズセンター*発足1周年および女性学長就任の記念シンポジウム』で「今後はより一層、学内外でのジェンダーをめぐる学術と活動を学内外に「開き」盛り上げて行きます」というお話がありましたが、具体的にどのような活動を予定されているのか、お聞きしたいです。

*ジェンダー教育およびジェンダー研究、キャリア教育・支援を実施することを目的とし、2023年4月に開設された。

 年に2回くらい、大きなシンポジウムを開けるような体制を作るため、まず、「ジェンダースタディーズセンター」に今よりも多く予算をつけたいです。あるいは、先生方の人脈で、ジェンダーの専門家の方たちが大学に来たときに、講演会を開けるような財政的な余裕を持たせたいと思っています。フレキシブルに講演会を開いて、みんなにジェンダーが抱える様々な問題を知ってもらう機会を持ちたいというのが1つです。
 10月16日には横浜国立大学との包括連携協定を結びました。色々な分野で横浜国立大学とフェリスが協力することになっているのですが、特に強調する分野は、ジェンダーです。手始めに現在検討しているのは、フェリスで開催した「生理の歴史展」の展示一部を、横浜国大に持っていくという企画です。将来的には、両校共催で、ジェンダーに関する講演会を設けたり、研究活動を行ったり、あるいは学生を巻き込んで、男性と女性の働き方についてディスカッションできるフォーラムを開いたり、ワークショップを開いたりすることを考えています。横浜国大が推進しようとしているフェムテックのプロジェクトに参加させていただけたら、とも思っています。
 それから、横浜12大学*の単位互換制度では、フェリスは女性の学生しか受け入れないと宣言していますが、これを取り払いたいと思っています。女子大の持っているジェンダー教育の側面、あるいは、女性を中心に据えた学問と学びの場に男子学生にも参加し、学んでもらいたいと思っています。これは来年の4月から始める予定です。
*フェリス女学院大学は、横浜市内にキャンパスを置く11大学(神奈川大学・関東学院大学・國學院大学・鶴見大学・桐蔭横浜大学・東京都立大学・東洋英和女学院大学・明治学院大学・横浜国立大学・横浜商科大学・横浜市立大学)と単位互換を実施しています。

―単位互換制度で男子学生を受け入れることによって、どのような学びを得られるとお考えですか。

 それはやってみないと分からないです。ただ、共学というのは女子大と違って、学問と学びのスタイルが男性中心に組み立てられています。その中に女性を受け入れてきました。女子大は女性中心。女性のものの見方、女性の関心が中心に置かれ、問題が設定されます。また、学びのスタイルも女性中心です。そういう環境に男子学生を招き入れ、女性がどういうスタイルを持ち、どう考えているのかを彼らに学んでほしい。
 これまでのやり方でフェリス生を守っていくべきだと、中には心配する人もいると思います。しかし、女性の空間が排他的であることを私は望みません。女性はどんな環境にあっても自分で自分を守れる強さを持たければいけないと思っています。男子学生を単位互換で受け入れるくらいの度量、その状況下で自分たちを成長させていく賢さをフェリス生には持ってほしい。それに、単位互換で男子学生を受け入れることは、女子大学一般で主流になっています。フェリスも遅ればせながら、トレンド入りします。

―先ほどお話があったように、単位互換制度で男子学生受け入れを認めるということでしたが、"トランスジェンダー"の学生の入学受け入れについては、どのようにお考えになりますか。

 これは非常に難しい問題なんです。私は、受け入れて良いと思っています。手術を受けなくても性自認が女性であるなら、女性と認めて、女子大学に入学して良いと思いますが、一方でトイレの問題、寮、合宿先での風呂等の問題が出てきます。入学してもらったとして、全てにおいて、身体が女性の人と同じように遇することはできないことになります。そこのところは、もし受け入れることになった場合、予め了解を得てからということになると思います。また、ユニバーサルトイレを増やすとか、財政的にそういったことができるのかも検討しなければなりません。また、性自認が男性で、身体が女性の場合はどうするかも考えなくてはいけません。来年度から新しい学部が始まるので、そのあわただしさが一段落したら、本格的に議論することになっています。慎重に検討していきます。

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インタビューに笑顔で答える小檜山学長

小檜山学長への取材を通じ、女性活躍を促進していきたいと感じる一方、現実問題として多くの問題が生じていることも分かりました。そして、フェリス女学院大学では女性の団結力やリーダーシップの型を示していきたいというお話がありました。共学とは異なり、女子大だからこそ発揮していける部分が多くあることを再確認しました。

また、単位互換制度で男子学生を受け入れることについての学長の思いを聞くことができ、私たちフェリス生の卒業後の活躍について学ぶことが多くありました。 次回の第三部では、2023年度に設立された「ジェンダースタディーズセンター」への取材を取り上げます。「ジェンダースタディーズセンター」が実際に行っていることについて、またどのような思いでセンターを運営しているのかについて見ていきたいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。
また次回お会いしましょう!


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