「やさしい日本語」をご存じですか? その1
2025年01月14日フェリスチーム2024
その1 〜横浜市の取り組みレポート〜
こんにちは!フェリス女学院大学3年生の牧田未来です。
突然ですが、皆さんは「やさしい日本語」という言葉を聞いたことがありますか?
「やさしい日本語」とは、外国人(日本語を母語としない、日本語を学び始めた人)にもわかりやすい、簡単な日本語のことです。*
*横浜市の「やさしい日本語の情報発信について」から引用
そんな「やさしい日本語」がどのようにして作られたか、簡単にご紹介します!
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、日本語を理解することができず、避難や災害の重大な情報を得られなかったために多くの外国人が適切な行動を取ることができず、甚大な被害を受けました。
そこで、災害発生時などの緊急時に外国人に対して、日本語でも的確に情報を伝えられることを目的に考案されたものが「やさしい日本語」です。
当初は、災害などの緊急時の情報伝達手段として使用されていましたが、現在では生活情報や観光情報などの緊急時以外の情報を伝える手段として、自治体や外国人の支援団体などで広く使われるようになりました。
横浜市では現在、横浜市のホームページの翻訳言語の中に「やさしい日本語」が含まれており、「やさしい日本語」でホームページが閲覧できるのをはじめ、窓口では「やさしい日本語」で書かれた「指さしシート」が活用されているなど、「やさしい日本語」での情報発信や支援が行われています。
2024年11月の横浜市の調査によると、横浜市には現在169か国126,634人の外国人が住んでいます。下のグラフを見てみると、多様な国籍の外国人が住んでいるということが分かります。彼らのそれぞれの言語に対応して翻訳を行うことは極めて大変ですが、一部の言語に絞って翻訳すると不平等になってしまいます。「やさしい日本語」は全ての外国人に平等であり、外国人だけでなく子供や高齢者にも伝わりやすい手段であると考えられているため、「やさしい日本語」での発信は多くの人にとって便利なものといえるでしょう。そして、今後は「やさしい日本語」での情報発信や支援が広がり、私たちにとっても身近に感じられるようになるでしょう。
そうしたことから今回の取材では、「やさしい日本語」の活用を推進している、横浜市政策経営局広報課の職員の方に「やさしい日本語」に対する想いや今後について伺いたく、文書インタビューを行いました。
それではこれからインタビューについて取り上げていきたいと思います。
(1)なぜ多言語と「やさしい日本語」の両方でホームページや広報など外国人に対する支援を行っているのでしょうか。
横浜市には2024年10月末現在、約12万人、約170の国・地域出身の外国人が暮らしていますが、すべての母国語に翻訳して情報発信することは難しいです。そのため、横浜市多言語広報指針*では、外国人市民の方などに向けた情報発信手段の一つとして、「やさしい日本語」を活用しています。
*多言語広報指針では、英語、中国語(簡体字)、ハングル等の外国語とともに、「やさしい日本語」での情報提供を積極的に行うよう定めています。
参考:横浜市多言語広報指針(横浜市ウェブサイト) 横浜市多言語広報指針 横浜市
以上のようなご回答をいただきました。
どのような情報提供がされているのか、実際に横浜市役所へ訪問して調査を行いました!
市役所の情報センターの一角にこのような多言語に翻訳されたリーフレットが設置されていました。「やさしい日本語」が使用されているリーフレットや配布物はありませんでしたが、情報センターの職員の方に聞いたところ、ホームページなどのオンライン上で「やさしい日本語」が用いられたリーフレットや掲示物を閲覧することが出来るそうです。
(2)災害時などの緊急時に使用する目的で考案された「やさしい日本語」ですが、
横浜市では日常生活の情報においても「やさしい日本語」を使って発信されているかと思います。
緊急時、日常生活の場面に関わらず「やさしい日本語」を使用されることへの想いを教えてください。
相手が求めている情報をお伝えすることは、緊急時、日常生活の場面に関わらず必要なことだと考えます。また、行政の取組は難しい事業名や用語が多い中で、特に在住外国人の方へ日常生活に必要な生活情報や行政情報を伝える際には、理解いただけるよう、情報を提供する側(=横浜市)がわかりやすく伝える姿勢を強く持つことが必要だと思っています。だからこそ、窓口等ですべての言語に対応することが難しい中では、「やさしい日本語」の使用が必要だと思いますし、コミュニケーションの一つとして、態度や表情などを含め相手を理解する気持ちを大事に寄り添うことも「やさしい日本語」だと考えています。(なお、出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン(2020 年 8 月)」によると、外国人の方が希望する情報発信言語は「やさしい日本語」が 76%を超えているそうです。)
「やさしい日本語」での情報発信を希望する外国人が76%と高い割合であることに驚きました!
こんなに高い割合で「やさしい日本語」を希望する人がいるということは、今後も外国人の増加による需要の拡大が考えられます。ですが、日本人にとってはなかなか身近に感じられにくい「やさしい日本語」。私たちも「やさしい日本語」について知識をつける必要がありそうです。
(3)「やさしい日本語」を使用してからの利用者の反響はありましたか。
市の生活情報や行政情報を提供している市ウェブサイト多言語ページ*の「やさしい日本語」ページのアクセス数は、言語別では英語に次ぐ2番目となっており、多くの方に閲覧していただいています。
*横浜市ウェブサイト生活情報多言語ページ(やさしい日本語)
こちらからも「やさしい日本語」についての需要の高さが窺えます。
今後、「やさしい日本語」がどのように広まっていくのか気になります。
(4)政策経営局広報課のご担当者様が感じている現状の課題と課題解決に向けた今後の展望を教えてください。
「やさしい日本語」をより多くの市職員が使うことできるよう、広報課では職員向けの研修を定期的に行っています。また、実際のコミュニケーションに活かせるように、区役所等での窓口対応や、各所管課で作成するチラシやお知らせを「やさしい日本語」に書き換える練習を行い、庁内での実践的なスキルアップを図っています。また、外国人の方が区役所へ来庁した際、用件を職員に伝えやすくするための「指さしシート」を作成し、コミュニケーションツールを強化しています。
指さしシートは下の画像のものです。
実際に区役所総合窓口で使用されているそうで、外国人が来庁した時も安心ですね!
案内所では多言語に翻訳しての案内が出来るような職員の方がいらっしゃるようでした。
(5)「やさしい日本語」を知らない外国人や日本人も多いと思いますが、今後どのようにして「やさしい日本語」を広めていく予定でいらっしゃいますか。
広報紙やSNSなどで継続的に発信し理解してもらうことが何よりも大切だと考えています。 2024年4月にはサッカーチームの横浜FCと連携し、「やさしい日本語」普及動画を作成していただきました。市ウェブサイトでも掲載しており、このような企画も多くの方に知っていただくきっかけになればと考えています。今後も本市の他部署や様々な機関と連携して、「やさしい日本語」に関する取り組みを行っていきたいです。
日本人にとってまだまだ認知度の低い「やさしい日本語」。
そして、外国人にとってウェブで「やさしい日本語」にアクセスできなければ、「やさしい日本語」の存在を知ることはできません。
「やさしい日本語」は、誰でも簡単にアクセスできるよういろいろな媒体での発信が必要不可欠であると感じました。
インタビューと市役所訪問を終えて、一つ疑問に思った点がありました。
それは、市役所内の案内板や市役所内の表示に「やさしい日本語」で表記されているものが一つも無かったことです。
こちらをご覧ください。
多くが英語翻訳の表記になっていて、一部に韓国語、中国語の翻訳がされています。
重複する形になってしまいますが、横浜市には、169か国の外国人が住んでいます。
英語、韓国語、中国語が理解できない人はどのようにして、目的地まで向かえばいいのでしょうか。案内所にたどり着くことも難しく、不安を抱えながら向かっていることでしょう。
つづいて、こちらもご覧ください。
こちらは、馬車道駅から横浜市役所に向かう時に見つけた案内板です。
こちらも多くが英語翻訳のみとなっていて、一部に韓国語、中国語での翻訳が見られました。
少し話が変わりますが、調査を終えて馬車道駅から日本大通り駅まで歩いていたところ、3人の外国人に市役所や県庁、銀行の場所を聞かれました。特に銀行は、目の前に移転したと書かれている大きな看板がありましたが、「銀行について何かの情報が書かれていることは分かるが、どのような内容が掲載されているのか分からない」とお話されていました。
日本語、英語、そして韓国語や中国語を母語としない人には、横浜市役所の案内板は分かりにくいものであると感じました。
オンラインではホームページが「やさしい日本語」での翻訳がされていたり、「やさしい日本語」で書かれたリーフレットなどの閲覧が出来たりと、支援が充実していますが、実際に来庁される方に向けた支援も今後増えていってほしいと思います。
「やさしい日本語」は外国人にとっても、日本人にとっても分かりやすく便利なものであると考えます。
今後「やさしい日本語」がどのように拡大していくのか、目が離せません!
最後までお読みいただきありがとうございました!
第二部は、実際の外国人の声を聞き、皆さんに「やさしい日本語」についてより理解していただけるような内容になっていますので、よろしければ第二部もご覧いただけますと幸いです。
それでは、また第二部でお会いしましょう!