日本版DBS施行決定① こどもを守る方法とは?
2026年02月02日 伊藤千夏
2026年12月25日に施行予定の法律に、こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)があります。この法律の核とも言えるのが、「日本版DBS」の導入です。日本版DBSを導入すると、こどもに接する仕事に就く人の性犯罪歴(最長20年)を確認することが義務になります。現時点では、その義務範囲は学校や認可の保育所と限定されており、認可外保育施設や放課後児童クラブ、学習塾、習い事などは義務ではなく、犯罪歴を調べることも出来るという認定対象に留まっています。
私は2024年の冬に神奈川大学のジャーナリズムに関する授業で、この法律についてのプレゼンテーションをしました。その際、この法律の存在を知っている人は私を含めて100人中2人でした。 この日本版DBSやこども性暴力防止法の存在を知らない人は現在も多いと思われます。この法律が施行されると、自分たちのこども世代だけではなく、自分たちがこどもに関わるときの環境にも大きく影響します。
今月は、そんなこども性暴力防止法の日本版DBSについて、有識者やこどもに関わる職業の方への取材を交えながら取り上げます。
●日本におけるこどもへの性犯罪被害
性犯罪の事件が起こると、度々SNSでは「日本は性犯罪に対しての対応が甘い」という意見が見られます。警察庁生活安全局人身安全・少年課の「令和6年における少年非行及び子供の性被害の状況」(2025)の児童ポルノの項目を見ると、2024年のこどもへの性犯罪件数は1265件にも及びます。1265件が総数とも言い切れません。性犯罪の場合、自己嫌悪や恥ずかしさから声をあげられないケースがあります。まさに「魂の殺人」です。実際の被害者数はもっと多い可能性が高いです。

●DBS法
日本版DBSには、モデルとなった元の制度があります。それがイギリスにおいて導入された、DBS(Disclosure and Barring Service)制度です。イギリスのDBSは、英国政府(内務省管轄)のもと、犯罪歴情報の確認および証明書の発行を行う仕組みになっています。イギリスでは、18歳未満のこどもと継続的・密接に関わる職種やボランティア活動に従事する場合、DBSによる犯罪歴証明の取得が義務付けられています。取得した証明書を雇用主や関係機関に提出し、その確認を経て初めて就労・活動が認められます。
このような犯罪歴確認制度は、こどもを性犯罪や虐待から守ることを目的としており、現在では制度設計に違いはあるものの、イギリス以外のヨーロッパ諸国においても広く導入されています。
●日本版DBS法導入の課題
加害者の犯罪歴は加害者にとって、重要な個人情報です。日本の現行の法律では、個人情報保護の観点から人の犯罪歴を調べ、証明書を発行するというDBSの仕組みの導入は出来ません。そのため、こども性暴力防止法の立法が不可欠であり、2024年6月にこの法律が成立しました。
●性被害者の視点
かくいう私も高校生の頃、被害にあったことがあります。私はそのことを誰かに言えずに過ごしました。後にそのことを話すと、私の身近な友人たちも被害にあったことがあると話していて、実際に警察にいかない人も多いと実感しています。この法律が出来たことで、そんな弱い立場の人間が犯罪被害から少しでも離れた安全な環境に身を置くことが出来るのかと思うと、安心します。
こども性暴力防止法の施行によって、直近20年での性犯罪の犯罪歴がある人はこどもに関わる仕事に就けなくなります。これは、働く人にとっても、自分たちの潔白を証明することが出来るため、安心して働ける職場環境を構築出来るのではないかと私は考えます。
とは言っても、私の視点は被害者の視点であり、女性の視点です。男性ならではの葛藤もあり、この法律が導入されることが全て正しいとは言い切れません。
次回の記事では、男性からの、そして児童と関わる仕事の立場の方への取材を通して、日本版DBSを考えます。
【参考文献】
・こども家庭庁 支援局 総務課 こども性暴力防止法施行準備室「こども性暴力防止法について」
・こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議報告書」(2024)
・こども家庭庁「こども性暴力防止法(学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律)」
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou(2025.12.14閲覧)