「やさしい日本語」をご存じですか? その2

2025年02月18日フェリスチーム2024

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その2 〜「やさしい日本語」について留学生にアンケートしました!〜

こんにちは!フェリス女学院大学の牧田未来です。
今回は、前回に引き続き「やさしい日本語」に関する留学生の生の声やタウンニュースに掲載された記事を「やさしい日本語」に翻訳するなどボリューム満点の記事となっておりますので、是非最後までお付き合いいただけますと幸いです。

改めて「やさしい日本語」とは、外国人(日本語を母語としない、日本語を学び始めた人)にもわかりやすい、簡単な日本語のことです。*
*横浜市の「やさしい日本語の情報発信について」から引用

現在横浜市では「やさしい日本語」を使った情報発信が積極的に行われており、その現状を前回の記事で取り上げています。
第一部はこちら→https://seijinomura.townnews.co.jp/students/2025/01/ferris250114.html

回答から見えた生の声

横浜市やその行政区で積極的に情報発信がされている「やさしい日本語」ですが、実際に利用し、身近に感じているであろう留学生はどのように感じているのでしょうか。
リアルな声を聞くべく今回は関東圏の大学に留学している30人にアンケートを行いました。
アンケートは、2025年1月21日~2月7日までの期間、webフォームを使い、実施しました。
アンケートの質問と回答結果はこちらからご確認ください。

アンケート

まず、「周囲の人が『やさしい日本語』を利用してくれるか」という問いについては、87.5%が「時々話す」を選択し、12.5%の人が「話していない」を選択する形となりました。

続いて、「どんな場面で『やさしい日本語』を耳にしたり目にしているか」という問いには、50%の人が「学校」と答え、周りに「やさしい日本語」を使う人がいない、という回答は12.5%でした。

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また、「現状に対して『やさしい日本語』が増えてほしいか」という質問には、87.5%の人が「もっと増えてほしい」を選択し、12.5%の人が現在の「やさしい日本語」の数が「少なくて困る」と回答しました。
このことからも「やさしい日本語」の高い需要が窺えます。

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そして「『やさしい日本語』はどこで増えてほしいか」について、記述式で複数回答可で質問したところ、次のような回答が出ました。こちらは回答を5つにまとめ、多い順に記載しています。

  • ・生活に関する事情(ガス、水道の契約、銀行、携帯会社からの郵送物など) 17人
  • ・市役所、市役所などの行政からの郵送物 8人
  • ・物事を理解することが大事な場所など(緊急事態、公共スペース) 6人
  • ・レストランのメニュー 4人
  • ・道の看板 2人

日常生活に深く関わる面での「やさしい日本語」の利用が求められていることが分かります。

最後に「『やさしい日本語』が増えてほしいか」という質問には、75%が「増えてほしい」と回答しましたが、一方で25%の人は「やさしい日本語を使わなくてもいい」と答えました。その理由について詳しくたずねると「日本語上級者には使わないでほしい」「やさしい日本語を使うと自分の日本語のレベルが上達しにくくなるのでそのまま話してほしい」という意見も挙がりました。

留学生から聞く実態

こちらのアンケートでは、「やさしい日本語」に対して多くの留学生からの高い需要があることが分かりました。より深く留学生の方の意見を聞きたいと思い、アンケートにご協力いただいた1人の留学生(Aさん)にお話を聞いてみました。
Aさんは中国から来日した25歳の女性です。
そして、日本語教育学を学んでおり、「やさしい日本語」についてよくご存知の留学生です。

Q:「やさしい日本語」を使ってコミュニケーションをとろうとする日本人をどのような場面で見たことがありますか?

Aさんによると「区役所で指差しシートを使って説明してくれたり、大学で短文による簡単な語彙で説明をされたりした経験があります」とのこと。
また、医療現場で診察時に医師から外国人の患者に「やさしい日本語」で話しかけていたり、日本語学校で教師が生徒に「やさしい日本語」を使っていたりするところに遭遇したことがあると話してくれました。

Q:どんな場面で「やさしい日本語」が増えてほしいですか?

「電車などの公共交通機関の乗り換えに関する説明や看板、命に関わる際のアナウンス、行政などから送られてくる重要な文書を『やさしい日本語』で発信してほしい」とAさん。
電車などの公共交通機関の乗り換えに関する説明に関しては、乗り換えの路線やどの電車に乗るのか分からず、困った経験が以前あるそうです。「やさしい日本語」で発信されていれば、混みあっている案内所まで行くことなく、案内看板や放送を理解して目的地までたどり着くことが出来ます。
また、「行政などから送られてくる重要な文書は、前置きが長く文量が多いため、主に何を伝えたいのか理解できず、難しい語彙も多いため、理解に時間がかかってしまう」とのこと。翻訳アプリを利用しても文量の多さや日常的に使用しないような硬い言葉が多いためか、翻訳の精度が低くなってしまい、毎回苦労しているそうです。

Q:日本語のどんなところが難しいですか?

「敬語やオノマトペ(*「わんわん」「ゲラゲラ」などの擬音語の総称)、書き言葉などが特に難しい」とのこと。
周囲の人が「やさしい日本語」の存在を知らなくても、無意識のうちに簡単な語彙で話していたりと「やさしい日本語」で話してくれているため困ることはあまりないそうですが、書き言葉や命にかかわる大事なアナウンスは、自分自身で理解できないといけないため、毎回大変だと感じられているようでした。

翻訳記事で見る「やさしい日本語」

Aさんへのインタビューから日常生活で言語の壁からどのような苦労をされているのか、そして、どのような場面で「やさしい日本語」が必要とされているのか、よく理解できました。
Aさんは「『やさしい日本語』の存在を知っている外国人は少ないのではないか」とする一方、「日本人の『やさしい日本語』の認知度も低いと思うが、無意識のうちに『やさしい日本語』を使って話してくれている」と話してくれました!
読者の皆様も「やさしい日本語」とはなんだろうと疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、実際に「やさしい日本語」で書かれた文章と私たちの見慣れている普段の文章でどのような違いがあるのか感じていただけるよう、このようなものをご用意いたしました。
こちらは、タウンニュースに掲載された記事とそれを「やさしい日本語」に変換したものです。
それでは、2024年12月5日に公開された緑区版のタウンニュースの記事でどのような違いが見られるか、比較してみましょう!!

↓こちらがタウンニュースで掲載されていた記事です。

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↓そして、こちらが先ほどの記事をやさしい日本語に変換したものです。

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こちらの「やさしい日本語」で書かれたものは、日本語教師でフェリス女学院大学で日本語教育学の分野で教鞭を執られている古屋 憲章先生に監修していただいたものです。
そして、「やさにちチェッカー」*と言われる文章が「やさしい日本語」で書かれているか判定するサイトを利用して総合判定がAになるように作成しました。
こちらの下の画像が判定結果です。

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*「やさにちチェッカー」http://www4414uj.sakura.ne.jp/Yasanichi1/nsindan/

変換する際のポイントは、

  • 1. 一文を短くすること
  • 2. 語彙を簡単なものにする
この2点です。こちらの2点に意識して作成いたしました。

2つを比較してみるとこの2点のポイントを意識するだけで文章が大きく変化することがお分かりいただけるかと思います。たったこれだけのことを気にするだけで大きく変わりますので、皆様も「やさしい日本語」で書いたり話す場面がありましたら、是非ご参考にしていただければ幸いです。

これから「やさしい日本語」はもっと多くの場所で活用され、今後皆様が身近に感じるようになっていくにつれ多くの場面で使用されていくと思われます。「やさしい日本語」といっても耳馴染みのない言葉かもしれませんが、共生社会を目指す現代社会において避けて通ることの出来ないものであると私は考えます。無意識のうちに「やさしい日本語」を使っている人もいらっしゃるかもしれませんが、「やさしい日本語」がどのようなものかよく理解したうえで使うことが大切ではないかと考えます。
今は身近に感じにくいものだと思いますが「やさしい日本語」について知識を深め、使用することについて一緒に考えていきましょう!
少しでもこの記事が「やさしい日本語」について知識を深めたり、考えるきっかけになりましたら幸いです。

そして2024年11月から今回の記事まで5回にわたって記事を掲載させていただきましたが、こちらで最後の記事となります。
拙文ではありましたが、私たちの記事をご覧いただき誠にありがとうございました。
このような素敵な経験をさせていただけてとてもうれしく思います。
またいつかお会いしましょう!


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