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国会リポート 第262号 総覧より

12日金曜日にTPP環太平洋パートナーシップ協定の日米事前協議が決着を致しました。

TPPでは新規加盟を希望する国は既加盟国全員の了解を取ることが義務付けられています。つまり入会が遅くなればなるほど了解を取る国が増えるということになります。ASEAN4ヵ国とチリは早々と了解をし、メキシコは共同声明で支持を表明してくれました。

残るのはオーストラリア・ニュージーランド・カナダ・ペルーとアメリカです。中でもアメリカが難題なのは、他の参加国と異なり、条約の交渉入りに議会の力が極めて強いことであり、政府が他国と結ぼうとする条約案件を90日前に議会に通知し、その間に了解を取らなければならないという慣行があります。

もちろんそれをテコにハードルを上げるという交渉術も心得ています。他の国では条約を結ぶ意思決定は政府の専権事項であります。もちろんその条約が実際に発効するためには批准手続きとして、国会の承認が必要なことは言うまでもありません。

日本は今日まで貿易を通じて国を発展させてきました。その間に工業品の関税はほぼゼロにして来た経緯があります。しかし、通商交渉を結ぶ際には、その分だけ相手側に切るカードが少なくなります。よって交渉相手国は自分の関税を引き下げる見返りとして日本から取れるものがなく、そこで農産品の関税や関税以外の案件を持ち出してくる傾向があります。

農業の関税は米の778%ばかりが宣伝されますが、実は日本は特定の物品以外の関税率は、農産品ですら持たれている印象よりはるかに低いのです。

さてTPP対策本部長である私の下には交渉を直接担当する首席交渉官のチームと国内調整、国内対策を担当する国内調整総括官のチームがあります。国内チームの長は、佐々木前内閣官房副長官補が務めますが、まさに円満な人柄でバランス感覚に優れ調整役には最適です。

一方の交渉現場責任者たる首席交渉官は、外務省ナンバー2の鶴岡外務審議官が就任しました。

鶴岡氏は「その道」の人には、つとして有名な人で「媚びず、臆せず、歯に衣着せず」の三拍子(?)そろった、タフ・ネゴシエーターです。

「あいつの凄いところは、部下にズケズケ物を言うが、上司にも対応が変わらないところだ(笑)」かつて上司(外相)だった麻生副総理の弁です。

私の知る限り礼節はわきまえた物怖じしないタフ・ネゴシエーターです。

さて、何度も述べて来たことでありますが、日本やアメリカにとってTPPは最終着地点ではなく、あくまでも、通過点だということです。

目的地はアジア太平洋レベルの広範な経済連携です。

例えば、APECワイドのFTA、FTAAP(アジア太平洋経済連携協定)です。

世界最大規模の経済連携協定をどういうルールを基本に作るかということです。市場原理主義か国家資本主義かの攻めぎ合いではなく、参加者全員がウィンウィン関係になる道を確立すべきです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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