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国会リポート 第282号(2014年2月10日発行)

先週の木曜日に補正予算が成立を致しました。この補正予算は消費税引き上げによる経済へのマイナス効果を極力減殺するためのものです。民間経済研究機関によると消費税導入後の反動減は2兆円弱になると見られ、まずはこの反動減を埋め戻していく必要があります。それだけでは消費税引き上げなかりせばたどったであろう成長路線に戻りきらない危険性があります。そこで反動減を埋めるだけの需要を作り、加えて引き上げがなければたどったであろう成長水準に経済を押し上げていくための措置を加味したものです。国費で5.5兆円、地方負担や金融の経済効果も加味すれば、18.6兆円の事業規模となります。

補正予算に反対した野党からは主に2点の指摘がありました。1点目は来年度予算要求の査定段階で削られた部分が8割方補正予算で再登場しているという指摘。2点目は本予算作成後、緊急に浮上してきた案件のための補正に複数年度にまたがる基金が多数用意されている点の2点でありました。

実は民主党政権当時、大々的にアピールした事業仕分けで削られた予算が大挙して次なる予算編成で盛り込まれたという同じような指摘がされました。さらに基金は民主党政権下の補正予算でもなされたと記憶をしております。前者は精査をする必要がありますが、本予算では財政再建を進めるための縛りとして一律に要求額をカットしたり、新規要求をする場合は他の部分をその分だけカットすること等を各省庁に求めるものですから、必要な新規要求がしづらくなり、補正予算と合わせて考えるという場面が過去にもあったことは否めません。また基金は財政法上に規定はありませんが、日本の単年度主義の予算制度の問題点を指摘する声は従来よりあり、iPS細胞の研究開発に象徴されるように数年度の予算の見込みがなく、1年毎に予算要求する不安定性を打開するための知恵として出てきたことは事実であります。いずれにしても単年度主義の利点は利点として生かし、その限界を打破するためその手法を検討する必要は与野党から指摘をされているところです。

この度成立した5.5兆円の補正予算もこれから審議に入る95.9兆円の新年度予算もアベノミクスの成長戦略に関する支出が多数含まれております。そしてその予算を使って具体的政策を実行していくための約30本の法案も今国会に提出をされます。

例えば、2020年までに女性の労働市場参加率を5%ポイント引き上げるという目標に対して、平成29年度末までに40万人の保育の受け皿を作り、加えて小学校1年の壁と言われている学童保育の充実をさせ、併せて育児休業中の給付を月給の半分から3分の2に引き上げる措置。加えて行政や企業の幹部職員を3割は女性にしていくという目標等、女性の社会進出一つをとってみても周到な環境整備が時限を切って責任者を決め、推進されます。

先般、ソニーがかつての主力商品であったパソコン部門を売却するという報道がありました。電機業界が業績を回復し、中には過去最高益を更新している中で一人ソニーだけが1000億円を超える赤字を計上しました。私の出身企業だけに定例会見では感想をしばしば求められます。金融やエンタメ部門では利益を出しているが、本来業務のものづくりで大幅な赤字を抱えており、ソニーの原点「イノベーション発出企業」に立ち返るべきだと答えてきました。イノベーション発出力の低下は何もソニーに限ったことではなく、日本国全体が拠って立つ基盤を失いつつあります。

ここ10年私の思うところは日本をかつてのイノベーション大国に復活させることです。2年前、野党自民党の経済金融調査会長の時にイノベーション立国のための提言を提出致しました。その第1弾は総合科学技術会議を名実ともに日本の科学技術とイノベーションの司令塔にすることでした。今国会に法案は提出をされ、予算と権限を持ち、その名も総合科学技術イノベーション会議として生まれ変わります。第2弾は基礎研究・原理研究の大学や大学院から産業化のシーズを見つけ出し、研究開発独法がそれを形にし、最終的には民間企業を巻き込んで製品化していく。上流から下流までの流れを一気通貫でシームレス化する機構改革です。その宿題を各方面に出しておりましたが、ようやく解が見つかりました。ドイツの方式を参考にバージョンアップしたものを提案したいと思います。「2番じゃダメですか?」は負の流行語大賞になりましたが、常に世界一を目指すイノベーション大国としてアベノミクスから新たな一歩が始まります。

お人好しの日本は研究開発独法が国費により上げた成果の詳細な報告会を開放しておりましたが、そこには中国や韓国の企業の依頼を受けた日本人がその成果を活用しようと大挙して押しかけてきました。つくづくお人好しの国です。日本に投資をしてくる企業ならば別け隔てなくすべきだとは思いますが、日本の研究開発の成果を利用するならば正規のルートで契約をし、取り組んでいく方式に変えるべきだと思います。後々、知財紛争に明け暮れるようなことは早めにその芽を摘んでおくべきです。

昨年末舌ガンを覚悟した時、政治家として何をなすべきかも真剣に考えました。我々の後の世代にも日本が科学技術イノベーション大国として常に新たな製品やサービスを世に問うような国家であり続けるためのシステムをこの国に残していくべきだと確信致しました。
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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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