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国会リポート 第288号(2014年5月12日発行)

連休中にOECD閣僚理事会に出席をしてきました。OECD(経済協力開発機構)は戦後発足した別名先進国クラブとも呼ばれるシンクタンクで、戦後世界経済の発展に貢献をしてきました。日本は1964年東京オリンピックの年に加入が認められ、晴れて先進国の仲間入りをしました。今年は加盟50周年で閣僚理事会では議長国となりました。私は初日の公開セッションでパネリストを務め、その後の2つのセッションで議長を務めました。

かつては加盟がステイタスであったOECDもその後G7・G20やASEAN等、新たな枠組みが出来るにつれてその魅力と使命が陰りを見せてきました。そこでグリア事務総長は今回OECDの存在価値を高めるために新たに2つの基軸を打ち出してきました。1つはあらゆる経済危機に対する加盟各国への耐性の診断と強化の提言です。世界の国々はこの20年の間にバブルの崩壊や通貨危機・金融危機、そして財政危機を経験してきました。経済の連携化が進む今日にあっては、鳥インフルエンザのごとく危機は発生国一国で済む話ではなく、周辺国をも巻き込む事態となっています。耐性の強化、すなわちレジリエンスとは経済分野における一種の危機管理なのです。さらには金融の国際化が進むにつれ、巨大ヘッジファンドの標的にされた国はいつ通貨危機に陥るかわからない不安も抱える時代となっています。

日本はアベノミクスを通じてデフレからの脱却というまだどの国も持っていない事態への処方箋を現実課題として取り組み中であること。その上で、財政再建を歳出縮減だけでなく、経済成長による歳入拡大を通じて果たしていくこと。そのために新たなフロンティアを作り、それを成果に結びつけるための税制や規制緩和による制度設計を説明しました。

OECDが掲げる2つ目の柱は今後の成長の拠点となりうるASEANと既加盟国との連携です。来年、2015年にASEAN10カ国は経済統合を目指します。その中身については議論のあるところですが、ASEAN経済連携は一つのゴールを迎えます。関税や非関税の障壁をなくし、人・モノ・金が自由に行き交う経済連合体となります。アジアからOECDの加盟国は日本の後、韓国に限られており、とっくに有資格国のシンガポールは加盟の意向を見せておらず、それだけOECDの意義が低下しつつあるだけに、シンガポールを含め、ASEANまるごとタイアップを図ろうとするOECDの意向は透けて見えるところです。

翌日はロンドンへと渡り、ジャパン・ソサエティーとチャタムハウス(英国王立国際問題研究所)にて講演をしてきました。両者ともアベノミクスに対する関心は極めて高く、講演後も活発な質問を受けました。その後、英国放送局BBCの取材を受けましたが、総じて言えることは日本のプレゼンス(存在感)が急激に上がっていることです。アベノミクスのスリーアロー・3本の矢は国際的な知名度を得てきましたし、特に3本目の矢・成長戦略に関心が集まっています。各所で3本目の矢をわかりやすく説明してきましたが、入り交じる期待と不安は期待へと大きく舵を切ったと確信をしています。

TPPに関する関心も高く、「いずれ中国も加盟せざるを得なくなる」との私の発言はかなりの関心を持って受け止められました。TPPが日・EU交渉を加速していることは間違いなく、日米が世界の通商枠組みについてもリード役になっていることは明白です。日・EU EPAはEU側のレビューが行われていますが、今日までの交渉経緯は高い評価を受けているようです。EU自身もアジアへのアクセスの道を探らざるをえないということです。
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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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