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国会リポート vol.309(2015年4月22日)

19、20日と2日間に渡る日米TPP閣僚交渉は、翌日の午前3時半にようやく終了いたしました。思い起こせば、アメリカ・フロマン代表との閣僚交渉は、昨年も午前3時までかかりました。しかも、その大部分は通訳のみ同席する一対一の交渉で、この上もなくタフな交渉を強いられます。当初の段取りでは、テーマ別に閣僚に加え、二人の交渉官が入るということになっていましたが、フロマン代表はすぐに役人を追い出し、一対一の交渉を求めてきます。結局、大臣を交えての会合は、ほとんど一対一の会合となりました。

大臣間で侃侃諤諤議論をし、方向性を出したところで具体的作業を交渉官同士でやらせ、行き詰まると再度大臣同士の折衝に戻す、ということをテーマ別に繰り返し行っていきます。穏やかにスタートした交渉も次第に険悪なムードとなり、声を荒げたやり取りへと変わっていきます。しかし、穏やかにやっているうちには交渉は進まず、物別れ寸前になって道が開ける、の連続です。

大臣折衝まで残されてきた課題は、米を中心とする農産物と、自動車と自動車部品が中心になりました。関税の撤廃・削減等やステージング(関税削減スケジュール)、セーフガード等機微な課題が残されています。2日間の交渉を通じて相当な前進はありました。しかしまだ重要な課題は残されています。引き続き事務ベースに移し、残された課題を処理すべく、両大臣から事務方に指示を出しました。昨日(21日)から残された課題について事務折衝が継続をされます。事務折衝の行方によっては再度閣僚会議が開催をされ、大筋合意へと繋げていきます。

12ケ国全体によるTPPの妥結のためには、2つの前提が必要です。一つは日米合意であり、もう一つはTPA(米国大統領貿易促進権限法)の成立です。TPP交渉妥結にとって重要な2つのエレメントが動き出しました。この先には次第に、TPP大筋合意が射程に入ってくると思います。来るべき日米首脳会談がTPP協議の大きな前進を歓迎し、引き続き日米合意に向けて大臣以下を督促し、併せて日米が協力してルール等マルチで残されている課題解決に向けて取り組んでいくことを確認する場にもなればと、思っています。

さて、経済財政担当大臣として、国会答弁してきた通り2020年基礎的財政収支の均衡、つまり国・地方の新たな借金を、元利払いに充てる分を除くと2020年までにゼロにする、わかりやすく言えば、その年の政策経費は、その年の税収で賄う、という財政再建プランを今年の夏までに提示する作業がスタートしました。現状で国・地方の財政を合わせて16.4兆円ある赤字幅を、2020年までに収入増と支出カットで埋めていく工程表の作成です。アベノミクスが順調に進んでいけば、このうちの7兆円は経済成長による増収で補てんされます。残りの9.4兆円の赤字をどういう手法で埋めていくかです。問答無用に政策項目別に歳出をカットしていけば、社会保障は質の低下をきたし、加えて歳出カットによる景気下振れ圧力が歳入減に働きます。そこで、歳出の効率化自身が税収を生む、という逆転の発想を公共サービスの産業化によってトライしてみてはどうか、という提案がなされています。さらには、公共サービスのコストをマイナンバーや、ICTを使って見える化し、無駄をなくす運動にインセンティブをつけて、国民運動化する、という提案もあります。国民運動や、保険者機能にインセンティブを付けて実行を促す。そもそも、保険者機能を強化しコストパフォーマンス意識を涵養すべき、という意見は以前からあります。PPP・PFIの活用も充実すべきです。民間の知恵と活力を公共部門にどう活用していくか、真価が問われそうです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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