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国会リポート vol.324(2015年12月14日)

先般ようやく消費税の軽減税率の対象品目の範囲について政府与党内で決着がつきました。生鮮食品に加え加工食品全般もその対象とするというものです。

それによる減税額は1兆円になりますが、何を恒久財源とするかは今後しっかりと議論して確定をするということです。財政再建の見地から減収額をできるだけ小さく留めたい財務省および自民党税調と、できるだけ庶民の負担軽減を図りたい公明党との協議は難航を極めました。世界のどの国も消費税を引き上げていく際に生活必需品にどこまで負担軽減措置を取るかは大議論になるところです。今回ここまで話がもつれた原因は公明党が抱いている危機感を感じ取る温度差にあったと思われます。自民党は過去の協議の経験から最後は公明党は降りてくれるだろうと思っていましたし、官邸はその深刻さをより重大に受け止めていたためと思われます。何はともあれ最悪の事態に至らず、年内決着が図れたことは良かったと思います。

さて5年にわたるTPP協議がようやく大筋合意に至りました。NAFTA(北米自由貿易協定)やEU(欧州連合)を超える世界最大規模の経済連携協定が出来上がります。世界経済の4割近い経済圏域が出来上がります。日本がアメリカとともに主導的役割を果たした経済連携協定は世界史に大きな足跡を残します。首脳会合の席上、議長役のアメリカのオバマ大統領が安倍首相を指名し、「TPPが大筋合意に至ったのは安倍首相の貢献があったからこそです。」と最大級の賛辞を送りました。歴史上いかに大きな出来事だったかの証左です。大筋合意を受けTPPの影響試算は年内には公表するつもりです。関税の撤廃や削減の効果の算定は比較的容易ですが、通関手続きをスムーズにしたり、投資や人の移動の円滑化など、関税以外の市場アクセスやルール面の効果、さらには、貿易や投資が拡大することで国内産業の生産性が向上する効果などの算定が非常に難しいところです。世界が使っているいわゆるG-TAPモデルを使い色々情報を加味しつつ算定をしていきます。従来、提示していた数値は関税に関わるものだけでしたので、経済効果はより大きくなるはずです。

TPP大筋合意の衝撃は想定をはるかに超えたもので、ASEAN諸国を中心に参加への問い合わせが殺到しています。またEUにおいてもいくつかの国において勉強会が始まるなど世界規模で衝撃を与えているようです。WTO協議が思うに任せない現在、TPPの大筋合意が他の経済連携にチェーンリアクション(連鎖反応)を起こす作用となります。そのチャーターメンバーに日本がなることができ、世界のルールメーカーになることができるということは日本の近代史の中に大きな1ページが加わることとなります。もはや遅すぎるという永田町の声に抗い、2年半前に加盟を決断した安倍首相の決断は称賛に値するものでしょう。「TPPを成立させることはアメリカが世界の成長センター・アジアの準会員になることを意味します。」 アメリカの議会関係者が来るたびに私が述べ、共感を得ていた言葉です。

アメリカがアジアの準会員になるということは安全保障上もアジアの安定要因になります。願わくばRCEP(ASEAN+日中韓豪ニュージーランド・インドの6か国)の進展に伴い、インドが参加し、日米中印の枠組みができることがこの地域の安定と発展の礎となります。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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