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国会リポート vol.359(2018年7月2日)

 「トランプ大統領にどう向き合うか」先進各国首脳達の最大の悩みのタネです。傍若無人で無原則のように見えるトランプ大統領の行動原理は実は明確な原則に則っているとワシントン・ポスト紙の論説委員長が述べています。


その内容は「大統領は何十年に渡って身につけた直感と偏見に基づいて決断を下す。討論や学習とは無縁の存在にある。」


「彼の直感と偏見の本質は以下の6点による。


 (1)同盟国は信用できない。


 (2)独裁者は尊敬に値する。


 (3)移民と有色人種は警戒しなければならない。


 (4)富裕層は正しく、知識人は信用ならない。


 (5)通商赤字は国家の脆弱性であり、製造業が経済の基盤である。


 (6)オバマ大統領の実績は破壊すべきだ。」


というものです。確かにG7で同盟国とのやり取りが殺伐としたものである一方、金正恩委員長やプーチン大統領への敬意の払い方はなるほどと思わせますし、貿易構造が進化し、モノからサービスへとアメリカの経済構造が変革していく中で、いまだモノの赤字構造だけに拘泥している姿もなるほどと思われます。問題はその大統領は世界最強の国家・アメリカの大統領であるという事実です。そしてその事実は、残りの任期のみならず、さらに次の4年間も続く可能性があるということです。


 先般、トランプ大統領の与党共和党の下院議員候補者を決める党内の予備選挙がありました。強固な支持層を持ち、共和党の中でも最も強い候補の一人と言われていたサンフォード下院議員が同地区の州議会議員に予備選で僅差ながら敗退致しました。同議員は強烈にトランプ大統領を批判し、ライバル候補の州議会議員はトランプ擁護の演説をしました。トランプ大統領が終盤強烈に現職を批判したため、盤石な支持基盤を持っていた同議員は落選をしました。いまや共和党の支持層の9割がトランプ大統領支持になっているため、大統領を批判する候補者は影を潜めています。本選挙で共和党対民主党の際にどういう結果が出るかは別として、共和党内ではトランプ大統領の独壇場になりつつあります。トランプ大統領が世界最強国家のトップであり続けるという現実に向かい合った中でどういう選択をしていくかが問われているわけです。


 先般のG7会合の中でも行き詰まった時には「シンゾーはどう思う?」とトランプ大統領とEUの各指導者双方から打診をされる安倍総理の存在はかろうじてG7を崩壊させない接着剤になっています。アメリカが各国からの自動車輸入に25%の関税を掛けると表明をした際、日本の識者の一部はEUと日本でWTOに提訴し、トランプ大統領を挟み撃ちにしてしまえばいいと主張していましたが、CNNが「トランプ大統領はWTOを脱退したがっている」と報じたように、トランプ大統領の行動はワシントン・ポスト紙が報じたような自身の行動原理に従ってなされるということを肝に銘じておく必要があります。一筋縄でいく人ではありません。皆の常識が通ずる人でもありません。そして、その人が今後6年間世界一の実力者であるかも知れないということを前提に事を運んでいかなければなりません。これが現実です。「シンゾーはいい奴だ」この一言で日本がどんなにアドバンテージを持ってきたのかよく考えてもらいたいと思います。トランプ大統領、習近平主席、プーチン大統領、金正恩委員長、荒くれ者が跋扈する世界の中で日本には安倍晋三カードがあるのです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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