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国会リポート vol.382(2019年5月30日)

 令和最初の国賓としてアメリカのトランプ大統領が訪日をされました。世界中から面会依頼が殺到する中、4日間という異例の長さの滞在でした。恒例のゴルフを安倍総理と楽しみ、かねてからの強い要望であった大相撲観戦も満喫され、北朝鮮問題やイラン問題そして、日米貿易協定と懸案事項をじっくりと話し合った模様です。自民党の役員会で「世界中の首脳がトランプ大統領と良い関係を築きたいと苦悩する中、安倍総理はどうしてそんなに親密な関係を築くことが出来ているのでしょうか。」という質問に答えて「トランプ大統領は誤解されている部分があるんです。高圧的な傲慢な態度だけが流布されていますが、本当は心優しい人なんです。そこを理解することが大事です。自身のゴルフ場のグリーンに水をまいているおじさんにもファーストネームで呼びかけるし、向こうも大統領のファーストネームで答えてくる。レストランのウエイトレスの一人一人にもファーストネームで声をかけるんです。なかなか出来ないことです。」そういえば、拉致被害者家族と会見した際にも一人一人に声をかけ、じっくりと相手の話に耳を傾け、時間がないとスタッフが制止するのを押しとどめて最後の一人まで、じっくりと話を聞いていたそうです。大相撲観戦はかねてからの大統領の強い要望で、格闘技好きのトランプ大統領にとって伝統と格式に乗っ取ったガチンコの勝負はことさら魅力的に映ったようです。重さ30キロの大統領杯も私費でわざわざ作らせた様で、土俵への上がり方、優勝杯の渡し方等、細かく何度も確認をされ、日本の伝統と格式に最大限の敬意を払われた様です。


 


 しかし、だからと言って日米貿易交渉がすんなりと行く訳ではありません。相変わらず、ライトハイザー代表は茂木大臣にこれ以上ない厳しい迫り方をしているようですし、甘い顔は一切見せません。トランプ大統領が8月ごろに妥結が出来るのではないかとツイートしましたが、そもそも、通商協定は九千項目に及ぶタリフライン(関税項目)をお互い突き合わせ、一項目ずつセットしていきます。TPP12の日米部分をそっくり二国間でということであるならば、作業は早いと思いますが、自動車や自動車部品はそもそもアメリカに対する日本からの改善要求項目であるにもかかわらず、アメリカ側は日本への改善要求と勘違いしています。もっとも、これはオバマ大統領の時にも出てきた現象です。関税及び非関税障壁の撤廃=輸出入量の均衡とならないのが貿易です。貿易とは比較優位性の交換です。つまり、物品ごとにコストパフォーマンスの優位なものどうしを交換し、国民が全ての物品に関しコスパの良い方を選択できるという制度です。ですから、コスパの有無にかかわらず、全ての品目が輸出入で均衡するというならば貿易の必要性自体がなくなるわけです。


 


 TPP11や日・EU・EPAが発効した現在、それらの国の農産品が日本市場で関税上の優位性を持ち、併せて中国の対米輸入規制との板挟みにあっている米国農業関係者からトランプ大統領への対日市場開放への要求は切実になってきているため、決着を焦っているのも事実です。しかしWTO上、二国間の貿易協定を作るには、自動車のように大きな貿易量を持つ産品は自由化の道筋を示すことが求められます。相互の要求がそろって初めて条約として成り立ちます。その辺の理解も促していく必要があり、とても8月に交渉終了というわけにはいきません。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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