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国会リポート vol.405(2020年4月27日)

 新型コロナウイルス対策の個人に対する給付金が1家族30万円から所得制限なしに全員に10万円という方針に変わりました。これにより個人に対する給付総額は4.0兆円から12.9兆円へと8.9兆円強拡大しました。30万円の時には対象世帯は日本全体の4分の1でしたが今回は国民全員ということになります。


 それにつけてもマイナンバー(マイナンバーカードは普及がまだ2,000万人ですが、マイナンバー自身は既に国民全員に附番されています)とその所有者の入金用に届け出る銀行口座が紐づけされていれば、この種の給付金や支援金はあっという間に口座に振り込まれます。マイナンバー法でマイナンバーの利活用は税と社会保障と災害対策への利活用と定められていますから、先ずはコロナの様なパンデミック事態を災害の一部に位置付ける法改正が必要です。野党の一部にはマイナンバーのマの字が出てくるだけで拒絶する党もありますが、この新型コロナウイルスの惨状を日本社会の脆弱性を洗い出す機会とすべきです。


 支給対象と金額が変更された為、閣議決定をされた予算が組み直されるということは極めて異例な事態ですが、それだけ深刻な思いが総理の心を揺り動かしたのだと思います。元々、総理はインパクトのある金額を一律給付するという考えでしたが、コロナ対策と財政健全化の両立を図ろうとする力に押さえ込まれ、所得制限付き一家族30万円という姿になったのだと思います。総理の会見で「もっと早く決断していればよかった。全て私の責任です。」との発言に忸怩たる思いが満ちていました。「もっと早く・・・」の言外には周りに何と言われようと自分の初心を貫き通せばよかったとの思いが伝わって来ました。


 個人や事業者への各種給付金の国際比較をしてみると総合的に言えば日本は質量ともにトップクラスです。そうした中アメリカの中堅中小企業への給付金が衝撃的報道となりました。500人以下の中堅中小企業に人件費を含む固定費のために最大1,000万ドル(11億円)を政府が負担するというものです。驚きです。しかしすぐに予算が払底し、2週間で申請が打ち切られたと聞いて、なるほどと思いました。翻って日本では給与は雇用調整助成金でカバーし、給与を除く固定費は50人以下の中小企業に限れば給与を除く賃料・光熱費・広告宣伝費などの固定費は平均で年間約400万円と算定されています。雇用保険による負担割合を10分の9に引き上げ、人件費を支え残りの年間固定費の半年分強、半年分200万円を一律支給することで企業の存続を支えます。これは理に適った対応だと思います。個人と中小企業への給付で消費税5%分を上回る支給となります。


 消費税を下げろという主張が党内にもありますが、国民皆保険制度の財源となる必須の税源です。コロナ関連の海外の映像で街中を力なく歩いている人が突然崩れ落ちるように倒れるシーンが衝撃的です。健康保険に加入できず医療が受けられない貧困層がコロナに倒れる瞬間です。我々が当たり前に思っている社会保障制度、健康保険や年金や介護保険が国民皆保険として全国民に行きわたっている国は実は世界では数か国しかありません。この紐付き財源として消費税があります。定額的な支出が約束されている社会保障の財源は景気変動に振り回されない安定的財源が必要です。GDPの変化にパラレルに調達できる消費税が社会保障の根幹を支えています。5%で時限的に戻せば良いと簡単に言う人がありますが、橋本政権の5%から今日の10%に引き上げるまでに20年の歳月を要し、引き上げ後の反動減と戦ってきた歴史を振り返ればそんなたやすいことではないことは解るはずです。消費税の導入と税率の引き上げは政権を犠牲にする歴史だったのです。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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