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国会リポート vol.406(2020年5月15日)

 専門家会議を経て全国に発せられていた緊急事態宣言が一部解除になります。一部という意味はエリアが部分的に解除されるという意味と経済活動や人の移動が部分的に解除されるという2つの意味です。シンガポールや韓国の例を見るまでもなく制約が解除された途端、クラスターが発生したという事態から見て感染と経済とはトレードオフの関係になっていることが解ります。感染が収束しない中で行動の制約もなく経済も縦横無尽にという訳にはいきません。日本が人口10万人あたりの死亡率が1、2を争う低さを保っているのも医療ハンドリングが上手くいっている証左です。先進国でその模範と言われているドイツの死者数の1/10以下です。病院のベッドは中等症・重症患者のために空けておく。軽症者は病院外施設での隔離が辛うじて上手くいっている理由です。勿論、政府の外出自粛要請に全力で協力して頂いている国民の忍耐が一番の貢献だと思いますが、経済活動を再開していく手順は感染がフェードアウトしていくフェーズに沿って経済活動を慎重にフェードインさせていくという絶妙なハンドリングが必要です。勿論、三密を避ける形で展開できるリモートワークについてはフル回転で支障はありませんが物理的接触が危惧される部分は解除のフェーズに沿った形で再開していかなければなりません。


  IMF国際通貨基金は世界全体の2020年の経済成長見通しを-3.0%と発表しました。リーマンショックの時が-0.1%でしたから1929年の世界大恐慌以来の落ち込みということになります。世界経済は成長率3%が基準点です。新興国や途上国が相当な成長の伸びしろを持っていますから世界平均が3%を超えると好景気、3%を割ると不景気という判断になります。-0.1%は基準点3%から見れば-3.1%落ち込んだということになり、リーマンショックは相当な不景気と言えます。コロナによる経済の落ち込みは景気・不景気の基準点からすれば6%の落ち込みですから如何に新型コロナショックがマグニチュードの大きいものか解ります。内訳を先進国とそれ以外で見れば先進国全体では-6.1%新興国・途上国全体では-1.0%です。更に個別の国で言えばアメリカが-5.9%、欧州が-7.5%、日本は-5.2%です。リーマンの時が-5.4%でしたから日本はリーマン並み、世界はリーマン以上と言えます。


  こうした中、私が以前から警鐘を鳴らしていた通り世界に先んじて回復した中国の国有ファンドや企業による先進国の疲弊した主要企業に対する買収攻勢が始まっています。昨日、週刊ダイヤモンドは水面下で始まった中国の東風汽車による日産自動車の買収交渉を報じました。かなり精度の高い情報と思われます。金融体力の落ちた企業に将来株式転換可能な社債の購入等、最初は技術協力や債権者として支配力を発揮していく作戦です。早急に日本の中核産業の金融体力の強化が必要です。以前より政府に具体的提言はしてきました。自民党政調会長にも提言をしたところです。ポストコロナは元の社会システム・経済システムに戻ることは想定できません。ブレトンウッズ体制が戦後の新しい金融経済の枠組みを作ったように中国の覇権に対峙した自由民主主義圏の新たなプレトンウッズ体制の構築という議論も出て来るかもしれません。大事なことは新しい世界秩序から日本が追い出されないことです。コロナに対する司令塔機能はコロナ後の世界秩序に対する絵図も書いていかなければなりません。「戦略がない」と言われない様に今こそNSSの経済班や経済財政諮問会議、CSTI(科学技術イノベーション会議)やAMED (医療研究開発機構)がしっかりと連携すべき時です。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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