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国会リポート vol.411(2020年8月27日)

 安倍総理の体調が取りざたされています。6月19日に麻生副総理、菅官房長官と4人で会食した際にはすこぶる元気で、出された食事もペロッとたいらげるほど食欲旺盛で、あっという間に3時間が過ぎました。その後、作家の伊集院静さんを囲んで会食した際も変わらぬ様子でした。しかし、お盆休み前に面会した時にはだいぶ疲労が蓄積している様子で、私からも休養を取られることを強く進言しておきました。その後、かなりの騒ぎになりましたが、本日(24日)検診から帰られた総理の会見を拝見すると吹っ切れたように張りがある声で表情にも生気が戻ってきました。関係者一同、一安心です。先進国の首脳中最も国会公務に拘束される総理として、日本は有名ですがアメリカ等先進国の多くは定期的に首脳を強制的に休ませ、国営の保養施設で英気を養わせるシステムが定着しています。国のかじ取りを任せる指揮官には常にベストコンディションでその判断を誤らない様、環境を整備するというのはその国にとって最重要案件だからです。


 かつて竹下登総理は「歌手1年、総理2年の使い捨て」という川柳で目まぐるしく総理が変わる日本の政治の不安定さを皮肉っていました。その後は2年どころか毎年総理が変わる状況が続きました。新総理が生まれればその内閣の新たな考え方、施政方針が表明され、その新方針に従って行政機構全体が動いていきます。毎年変わる総理が「私は前任者の施政方針をそっくり引き継がせていただきます。」という施政方針演説は聞いたことがありませんし、それでは新政権の意味がなくなります。主要国は政権の任期が5年から10年です。長期的視野、戦略的思考に沿って国家戦略が打ち立てられます。勢い、戦略的思考を持っている国と近視眼的思考にならざるを得ない国家では国家間競争に於いて後者が劣後していきます。


 私が政治家になって感じたことの一つは日本は何度も焼き直しの政策が次から次へ出て来ることです。短命の内閣で取り組まれ、中途半端に終わった政策が何年か後の内閣で名前を変えて再登場する。問題意識は共通しているのに決着がつかず、中断した政策がいかに多いかの証左です。


 さて、本日(24日)安倍総理の連続在任任期が佐藤総理の持つ記録を越え、歴代1位になりました。長いことのみを以って良きことでは決してありませんが、少なくとも衆議院任期4年間程度は1人の総理で務め上げるべきだと思っています。それは先に述べた通り戦略的思考を根付かせる為でもあります。私はよく冗談に、3年間だけ日本を独裁国家にしてもらえたら日本にとってやらなければならない課題はすべて解決できるのに、と言っていました。もちろん、そんなことは不可能ですしやるべきでもありませんが、実は数ある統治体制の中で最高の統治体制は神様による独裁と言われます。神は間違ったことはしないし、独裁はそのスピード感において民主主義をはるかに凌駕します。つまり民主主義のスピード感の欠如を揶揄したものです。


 お隣の中国を見ていて変革のスピード感に圧倒されるのは私だけではありません。もちろん中国共産党トップは神様ではありませんから、理想の政治には程遠いと思います。しかし、デジタルトランスフォーメーションによる覇権戦略に限れば、猛烈なスピードで実行されいくつもの国を傘下に組み込んでいきます。対峙する民主主義国家はその効率の悪さゆえにタジタジになります。国民が求める権利としての幸福と政府がその貢献に応じて与える幸福、自由主義陣営と権威主義陣営の陣取り合戦はかつての冷戦に代わる新たな冷戦となっています。そして勝利を収めるべきは国民が政権を選択する権利、人類の創造した普遍の価値観であらねばなりません。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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