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国会リポート第272号「総覧」(2013年9月4日発行)

この二週間は特に忙しい政治日程になりました。TPP協議は、年内妥結に向けての
大きな山場として22、23両日大臣会合が行われ、帰国するや週明けから消費税
引き上げの判断材料の一つにするための有識者を招いての「経済状況の集中点検会合」
が行われました。

TPP閣僚会合に参加をして感じたことは二つの点で日本が評価されている事であり
ます。一つは、日本が最後の参加国であるにもかかわらず極めて短時間の間にキャッチ
アップをし、入会するやたちまち現場の会議をリードするという点です。二つ目は、
いままでの会議がともすればアメリカ対それ以外という構図であったところへ、両者を
つなぐ立ち回りができる経済大国が入ってきたという評価です。

大臣会合の初日の夜に、日本主催の夕食懇談会を開催し参加を呼びかけました。TPP
会合のホスト国でないにもかかわらず、すべての閣僚が参加してくれました。(ホスト
国のブルネイのみ前日まで行われていたASEAN閣僚会合の慰労会が開かれており
代理出席となりました)酒を酌み交わし、日本料理に舌鼓を打つ中で和気あいあいと
数時間が過ぎました。

その中で、会議では言えない本音も含めて意見交換が出来たことはTPP会合を前進
させることに大きな貢献となりました。というのも、私が首席交渉官以下の現場の報告
を聞く限り各国がレッドライン(譲れないとする攻防ライン)を広範に構え、そこから
一歩も出ようとしないために交渉がスタック(膠着)状態に陥っているという話でした。

そこで、懇談会の席で「うちは一歩も譲らないけども、あんたは譲れ、といくら言い
合っても交渉は進まない。閣僚の責任で自国のレッドラインを精査縮小し、更なる柔軟性
を含めた交渉権限を首席交渉官に与え、交渉を進展させるべきだ。」と提案したところ、
出席者の賛同を得ることとなりました。

翌日以降の事務折衝が飛躍的に進んだかといえば、そんな単純事でないのもこの種の交渉
の常ですが、総括して言えば、ブルネイ会合の会議で決着を見たとまで言えるものは一つも
ありませんが、全く進まなかったものも一つもないということです。今後、問題点を整理
し9月の18~21日において、ワシントンで首席交渉官会合の開催を調整することに
なっています。大筋合意の目標は、10月の7日から開かれるAPEC首脳会議における取り
まとめですので、その露払いとしての大臣会合は形式会合でなく、かなりハードな交渉と
なりそうです。

ブルネイの大臣会合では、大臣が絞り込みを行い、交渉官に以後の交渉を指示しましたが、
ワシントンでの事務折衝は10月大筋合意に向けての大臣間の議論に委ねる項目の絞り込み
が重要作業になるはずです。つまり、大臣間で絞り込み、事務折衝に託し、次には首席交渉官
で絞り込み、大臣会合に託す。そうして最終合意へと導いてゆくタイムテーブルになると
思います。

さて、ブルネイから帰るやいなや、消費税率引き上げに関する経済情勢の集中点検会合を
行いました。60人の有識者専門家の方々の見解は、7割超が法律通りに引き上げるべきだ、
残りの大宗の方はなだらかな引き上げをまたは引き上げに反対、1割弱はコメントせず、
という結果でした。ただ、予定通りにという方もそのほとんどが経済対策を反動減だけで
なく、成長戦略の強化策もすべきというご意見でした。私からの報告を神妙な面持ちで聞いて
おられた総理は、日銀短観を最後の参考資料として10月上旬に判断を下されるということに
なりました。
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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

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