愛名やまゆり園での虐待の疑い事案についての私見/昨日の「愛名やまゆり園立入調査」に関して、県が記者会見を行いました
=一昨日の「愛名やまゆり園立入調査」に関して、9月3日、県が記者会見を行いました=
私はこれまでも一貫して、かながわ共同会が指定管理を行っている津久井やまゆり園や津久井やまゆり園芹が谷園舎で、居室への長期間閉じ込めの疑いがある、適正な利用者サービスが行われていない。と議会で訴えてきました。昨年の本会議一般質問や決算特別委員会、そして、先の予算委員会でも取り上げました。
一昨日の立入調査は、かながわ共同会が指定管理を行っている「愛名やまゆり園」でした。今年1月に虐待の疑いのある事案が虐待認定された施設です。先の予算委員会でも大きく取り上げて、厚木市の施設でもあるため、大きな反響もありました。寝た子を起こすな、あらためて触れるな的なご意見も頂戴しましたが、やはり、見て見ないふりはできません。
今年1月に虐待事案が発覚し、その後、半年ちょっとで発覚した今回の「虐待の疑い」事案です。
(資料からも推察されますが)例えば、幼い子どもであれば、今回のように「今後、市と連携して、虐待がなかったかこれからしっかり調査します」等というようなことが言えません。火災現場で「本当に燃えているかの調査をはじめます」というくらい滑稽なことのようにも思えました。第一に考えなければならないのは、虐待を受けたとされる当事者へのケアと再発防止です。
もちろん、現場で働く職員さんのほとんどは、献身的に日々働かれているものと思いますが、虐待を受けた疑いのある利用者さんの精神的なケアについてが第一なのに「かながわ共同会擁護」ありきのように見えてしまう県の姿勢は、本当に問題だし、この県の体質にこそ問題の本質があると考えています。
芹が谷やまゆり園は、令和3年度の開設から公募で選んだ法人を指定管理者とする方針でしたが、これを令和4年度末まで非公募で、かながわ共同会に指定管理者としての継続となりましたし、津久井やまゆり園は、令和6年度末までの指定管理期間を、これまでは令和3年度までに短縮する方針でしたが、これを令和4年度末までとしています。
そして、令和5年度当初からの指定管理者は、両施設とも公募により選定します。これにより、当初の知事の案よりも1年半ほど時間的猶予ができることになります。
公募の選考過程で、かながわ共同会が指定管理者として任せるにふさわしい法人に生まれ変わったと思われるかどうか、そこまでの改善ができるかどうか、(かながわ共同会に対して)「見極めている」状況です。
津久井やまゆり園利用者支援検証委員会は、愛名やまゆり園や中井やまゆり園での検証なども助言を頂くといったことも含め、検証の対象の拡大としていることから、津久井やまゆり園や芹が谷やまゆり園での指定管理者としての継続については無関係とはなりません。つまり、今回のことで、「非公募で、再度、共同会に任せる」「そのためには、共同会が実態把握し、改善策を提示」というペンディングになっている条件が満たせなくなる可能性があるということです。
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「虐待かどうかの判断が難しい場合もありますが、虐待でないことが確認できるまでは虐待事案として対応することが必要」ということは、大原則です。障害者虐待の判断にあたってのポイントの一つに、虐待をしているという「自覚」は問わないというものがあります。
毎日新聞に掲載された写真を見る限り、「怪我の防止」であったとしても、(部屋の内側から)ひとりで部屋の外に出られない状況を作ってしまっている時点で、虐待の疑いは成立します。
閑話休題。黒岩知事は、今年3月17日の予算委員会の中で、我が団の相原高広議員への答弁で次のように発言しています。
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津久井やまゆり園の事件を踏まえ、施設における安全管理の妨げとなり得る事案を指定管理者が認知した場合には、速やかに県に報告し、その対応を協議することとしました。
また、施設のサービスの質を確保するため、指定管理者の就業規則の整備状況を県においてもチェックする仕組みを導入するなど、モニタリングの強化も行いました。さらには、委員御指摘の基本協定についても、福祉施設のように施設の特性や状況に応じて必要な条項を独自に設けるなどの対応を図っています。
こうした制度の見直しにより、適正な運営が図られ、効果的、効率的なサービスの提供につながってきたものと考えています。
そうした中でも、協定書の在り方や指定管理者制度の運用につきましては、新たな課題に柔軟に対応するため、不断の見直しが必要です。今回の件が制度の運用に与える影響を検証し、見直しに生かしていきたいと考えております。
今後とも、さらなる県民サービスの向上に向けて、指定管理者制度を適切に運用してまいります。
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議員の中には「仕方がない」と主張する方もいらっしゃいます。昨日も「現場は大変なんだよ。知らないだろう?」的なことを私は言われました。誤解のないように言うと無所属の議員さんですが、本当に「あなた、何のためにこの仕事しているの?」と胸くそ悪くなりました。
現場職員の方が大変なのはわかりますが、だからと言って、障害当事者の方が身体拘束などの虐待を不問に付されたら(私が障害当事者だったら)たまったものではありません。県の職員も他人ごとのように思っているのかもしれませんが「もし自分が、障害当事者で身体拘束を受ける立場にあったら」と少しばかりの想像力を働かせて頂かないといつまで経ってもこうした事案は無くならないと私は考えます。
※ 刑事訴訟法第 239 条第2項では、公務員はその職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない旨が規定されています。 障害者虐待においては、市町村、都道府県が事実関係を把握した段階やその後調査を進める中で、警察等への被害の届出、告発の要否を適正、迅速に判断し、必要に応じ、被害者による被害の届出の支援や行政として告発を行うことが求められるとされています。
PDF: 市町村・都道府県における障害者虐待の防止と対応(平成26年12月 厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 障害福祉課 地域生活支援推進室)
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(引用)#やまゆり園事件は終わったか
~福祉を問う 神奈川の障害者入所施設、県が立ち入り調査 居室への長期閉じ込め情報
毎日新聞 2020年9月2日 18時00分 上東麻子
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2020年09月04日 22:07