成瀬地区の地盤沈下――原因究明の進捗と地下水採取を規制する条例の制定を提案
令和5年12月定例会 一般質問
1.質問の目的
成瀬小学校周辺では、道路の亀裂や地盤沈下が進行し、道路の通行止めや成瀬公民館の損壊など、地域住民の生活に影響が出ています。
2023年9月議会でこの問題を取り上げ、市からは神奈川県と連携して原因究明を進めるとの答弁がありました。
今回の一般質問では、その後の調査状況と近隣住民への情報提供について確認しました。
また、地盤沈下の原因として地下水の大量採取が関係している可能性も考えられることから、伊勢原市における地下水採取の規制状況を調査しました。
その結果、伊勢原市は県条例や工業用水法による地下水採取の規制地域に指定されていないことが確認されました。
そこで、地下水の採取状況を把握し、将来の地盤沈下を防止するため、伊勢原市独自の条例制定を提案しました。
2.これまでの経緯
2020年11月頃から
成瀬小学校周辺の市道848号線と2767号線で、地盤沈下に伴う道路損壊が目立つようになりました。
市は舗装補修や試掘調査などを行いましたが、亀裂や段差の発生が続きました。
2023年8月
市道848号線では道路の安全な通行を確保できないと判断され、一部区間が通行止めとなりました。
2023年9月25日 一般質問
成瀬小学校周辺の道路と成瀬公民館の損壊について取り上げ、原因究明、道路の復旧、近隣住民への周知などを質問しました。
市は、地盤沈下が現在も進行していることを認め、神奈川県と連携して原因調査を進めるとの考えを示しました。
また、近隣住民への特段の周知は行っていないことも明らかになりました。
地盤沈下の原因については、もともとの軟弱地盤に加え、地下水の採取が影響している可能性についても指摘しましたが、原因の特定には至りませんでした。
2023年12月14日(今回)
9月議会以降の調査状況を確認するとともに、地下水採取の規制制度に踏み込み、伊勢原市独自の条例制定を求めました。
3.主な答弁
地盤沈下の原因究明の進捗
市は、2023年10月に地盤沈下に関する情報を整理して神奈川県に改めて相談し、技術的な助言を受けたと説明しました。
しかし、地盤沈下の原因は依然として特定されておらず、引き続き調査を進めるとの答弁でした。
近隣住民と学校への周知
近隣住民に対しては、12月議会の時点でも特段の周知は行われていませんでした。
一方、成瀬小学校では、南側市道848号線の通行止めについて、全保護者にメールで連絡し、児童に対しても通行止めの道路に近づかないよう注意喚起しているとのことでした。
地下水の採取状況と規制制度
成瀬地区の工場などで地下水のくみ上げが行われているか質問しました。
市は、県条例に基づく手続が行われた事業所については、地下水の利用の有無や計画水量を把握していると答弁しましたが、成瀬地区の工場における具体的な採取状況については明確な回答がありませんでした。
さらに確認したところ、伊勢原市は神奈川県条例と国の工業用水法による地下水採取の規制地域に指定されていないため、これらの法令に基づく地下水採取の許可は不要であることが分かりました。
他市の地下水採取規制
神奈川県内では、横浜市と川崎市が地盤沈下防止のため、国の規制に加えて市条例による地下水採取の許可や届出制度を設けていました。
また、小田原市、秦野市、海老名市、南足柄市、座間市、開成町、真鶴町の5市2町でも、地下水の保全などを目的として独自の条例を制定していました。
伊勢原市が条例を制定していない理由
市は、これまで地下水採取が原因と考えられる広域的で大きな地盤沈下が確認されていなかったことや、地下水を水道水源として保全する必要性が課題となっていなかったことなどを理由に挙げました。
条例制定への市の見解
地下水の採取状況を把握し、将来の地盤沈下を防ぐためにも、市独自の条例が必要ではないかと質問しました。
市は、条例による地下水採取の規制も一つの方法として考えられるものの、現時点では被害の範囲が限定的であることから、まずは原因究明と再発防止策の検討を優先するとの答弁でした。
この時点で、条例制定に向けた具体的な方針は示されませんでした。
4.残った課題
今回の一般質問でも、成瀬地区の地盤沈下の原因は特定されませんでした。
また、地下水採取に関する制度上の問題も明らかになりました。
今後の課題は次のとおりです。
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地盤沈下の原因究明と調査結果の公表
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成瀬地区における地下水採取の実態把握
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近隣住民への情報提供
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神奈川県と連携した具体的な再発防止策
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地下水採取を把握・管理する制度の必要性
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伊勢原市独自の地下水採取に関する条例制定の検討
5.質疑応答(要旨)
Q1.9月議会以降、地盤沈下の原因究明はどこまで進んだのか。
A.経済環境部長
2023年10月に、市が収集した情報を整理して神奈川県に改めて相談し、技術的な助言を受けた。
引き続き地盤沈下の原因究明と対応策の検討を進めていく。
Q2.近隣住民や成瀬小学校の保護者への周知は行われているのか。
A.経済環境部長
近隣住民に対しては、現時点でも特段の周知を実施していない。
成瀬小学校では、市道848号線の通行止めについて全保護者にメールで連絡し、児童に対しても注意喚起を行っている。
Q3.全国や神奈川県内では、地盤沈下はどの程度発生しているのか。
A.経済環境部長
2021年度の全国調査では、水準測量が実施された20都道府県31地域のうち、年間2センチメートル以上の地盤沈下が確認された地域は3地域だった。
神奈川県内の調査対象地域では、年間2センチメートル以上の地盤沈下は確認されていない。
ただし、成瀬地区の地盤沈下が県内の他地区と比較して特異的な状況にあるかについては、現時点で把握できていない。
Q4.成瀬地区の工場などでは、地下水のくみ上げが行われているのか。
A.経済環境部長
県条例に基づく許可申請の手続が行われた事業所については、地下水利用の有無や計画水量を把握している。
※この答弁では、成瀬地区の工場における実際の地下水採取の有無について、明確な回答は得られませんでした。
Q5.伊勢原市で地下水をくみ上げる場合、誰の許可が必要なのか。
A.経済環境部長
神奈川県条例や国の工業用水法では、指定された規制地域内において、一定規模以上の地下水採取に許可が必要となる。
しかし、伊勢原市は規制地域に指定されていないため、これらの環境法令に基づく地下水採取の許可は不要となっている。
Q6.県内で独自に地下水採取を規制している自治体はあるのか。
A.経済環境部長
横浜市、川崎市では、地盤沈下を防止するため、市条例による地下水採取の許可や届出制度を設けている。
また、小田原市、秦野市、海老名市、南足柄市、座間市、開成町、真鶴町でも、地下水保全などを目的とした独自の条例を制定している。
Q7.伊勢原市では、なぜ地下水採取に関する独自の条例を制定していないのか。
A.経済環境部長
これまで地下水採取が原因と考えられる広域的で大きな地盤沈下が確認されていなかったことや、地下水の水質・水源確保が課題となっていなかったことなどによる。
Q8.今回の問題を受け、地下水採取を規制する条例を制定する必要があるのではないか。
A.経済環境部長
条例による地下水採取の規制も考えられるが、現時点では確認されている被害の範囲が限定的である。
まずは成瀬地区の地盤沈下の原因を究明し、再発防止を踏まえた対応策を講じることが第一であると考えている。
6.所感
今回の一般質問では、9月議会に引き続き、成瀬地区の地盤沈下の原因究明を求めました。
しかし、原因の特定には至らず、近隣住民への周知も十分に進んでいない状況でした。
さらに、調査を進める中で、伊勢原市には地下水採取を直接規制する独自の条例がなく、県や国の地下水採取規制地域にも指定されていないことが明らかになりました。
これまで大きな地盤沈下が確認されていなかったため、規制の必要性が低いと判断されてきたことは理解できます。
しかし、実際に地盤沈下による道路の損壊が発生し、周辺住宅にも影響が出ている状況では、従来の考え方を見直す必要があるのではないでしょうか。
もちろん、今回の地盤沈下が地下水のくみ上げによって発生したと断定できるわけではありません。
ただし、地下水採取が原因の一つとして考えられるのであれば、まずは地域内でどの程度の地下水が採取されているのか、実態を把握できる仕組みが必要だと考えます。
問題が起きてから原因を調べるだけでなく、問題を未然に防ぐための制度を整えることも行政の重要な役割です。
今回は、伊勢原市独自の地下水採取に関する条例制定を強く求めましたが、市から具体的な方針は示されませんでした。
今後も原因究明の進捗を確認するとともに、地下水の適切な管理と地盤沈下の防止に向けた取組を求めていきたいと思います。
7.出典
伊勢原市議会 令和5年12月定例会
2023年12月14日 安藤玄一議員 一般質問
2023年12月14日 20:00