『聞かなければ分からない』から『検索すれば分かる』組織への転換
9月議会の一般質問の報告です。
以下の質疑応答は、質問・答弁原稿をもとに要旨を整理したものです。
Q番号は、この記事内での参照用です。
1.質問の目的
今回の一般質問では、次の2つを取り上げました。
1.AI・DXを活用した行政事務改革について
⑴ ミツイワ株式会社との「行政事務のDX推進に関する連携協定」について
2.防災・災害対応におけるAI活用について
⑴ 熊本地震におけるAI活用とデジタル支援について
⑵ 本市の災害対応業務におけるAI活用について
1つ目の質問では、市が8月25日にミツイワ株式会社と結んだ「行政事務のDX推進に関する連携協定」で、これまで提案してきたことがどこまで実現できるのかを確認しました。あわせて、予算の積算根拠の管理と、市民に提出を求める書類の見直しについても聞きました。
2つ目では、熊本地震での国のAI活用を踏まえ、災害対応のどこをAIで支援し、どこを人が確認・判断するのかを平時から整理し、訓練まで含めて備えるよう求めました。
2.これまでの提案の経緯
- 令和7年3月
市公式LINEを活用したAIチャットボットの導入を提案。一般的な問い合わせ対応に加え、ごみ出し案内や防災情報の提供、防災チャットボットによる避難所検索なども求めた。再質問では、大規模災害時にLINEや電話から入る安否・所在などの情報をAIで集計し、「誰がどこにいるか」「どこの避難所に行けばいいか」「物資はどこにあるか」といった情報を24時間リアルタイムで提供する活用も提案。 - 令和7年6月
市民に提出を求めている書類について、その根拠を全庁で整理し、規則と実際の運用のずれを見直すよう提案。その整理にAIを活用することも提案。道路占用許可申請で求めていた公図の提出も、このときに取り上げた事例。 - 令和7年12月
内部事務専用のAI、いわゆるRAGについて、読み込ませている条例・規則・要綱などの整合性を、全庁横断で点検する仕組みを提案。 - 令和8年3月
すべての事業に事業IDを付け、予算・決算・行政評価・根拠法令をデータで結びつけることを提案。新人職員や異動した職員が、誰かに聞かなくても過去の経緯を調べられるようにし、「聞かないとわからない」組織から「検索すれば見つかる」組織への転換を求めた。 - 令和8年6月
令和7年3月に提案したAIチャットボットの進捗を確認。防災分野では、既存の避難所検索などの機能と生成AIチャットボットとの関係を確認し、災害時にも必要な情報へ迅速にたどり着ける仕組みを求めた。
3.前向きな答弁
- 「AIを自治体運営の基盤として活用する」という考え方は、今回の協定によって、より具体的かつ実行可能な形で進展する(Q3)
- インターネットに接続しない内部ネットワークにAI基盤を構築し、個人情報を扱う内部事務でもAIを活用できるようになる(Q1、Q2)
- 「聞かなければ分からない」から「検索すれば分かる」組織への転換が進む(Q1)
- 住民情報を扱う業務でBPRを実施し、業務プロセスを根本的に見直す(Q1)
- 予算・決算・行政評価・根拠法令などの行政情報をデータで結びつける提案は「大変重要な視点」(Q1)
- 積算根拠の管理には「改善の余地がある」(Q7)
- 過去の積算実績や経緯のデータ化・蓄積は「重要」(Q8)
- 市民に求めている提出書類について、市が既に持つ情報で代替できないかをAIで点検する活用を促進する(Q11)
- 災害対応では、平時からAIを活用できる業務や取り扱う情報の範囲を整理し、訓練での生成AI活用も含めて実効的な運用方法を整理する(Q15、Q19)
4.残った課題
- 査定後の最終的な積算根拠は、財務会計システムに反映されていない(Q4)
- 主要な積算根拠を予算審査資料として事前に示すことは、現状では「非常に高いハードル」(Q8)
- 行政情報のデータ化や知識基盤の構築は、今後の検討課題(Q3)
- 市民に提出を求めている書類の法的根拠を、全庁で一元管理する仕組みはまだ整っていない(Q9)
- 避難者情報や支援物資情報を一元管理・共有するデジタル基盤は、まだ導入されていない(Q13)
- 市独自の災害対応専用AIについては、現時点で具体的な方針は定まっていない(Q15)
5.質疑応答
(1)AI・DXを活用した行政事務改革
Q1.ミツイワ株式会社との連携協定によって、何が可能になるのか。
A.企画部デジタル・行政経営担当部長
- インターネットに接続しない内部ネットワークにAI基盤を構築し、個人情報を扱う内部事務でもAIを活用できるようになる
- 新入職員や異動した職員が、条例・規則・要綱、マニュアル、過去の蓄積などをAIに照会できる
- 「聞かなければ分からない」から「検索すれば分かる」組織への転換が進む
- 住民情報を扱う業務でBPRを実施し、業務プロセスを根本的に見直す
- 行政内部のルールや、予算・決算・行政評価・根拠法令などをデータで結びつける提案は「大変重要な視点」
- まず対象業務から始め、成果を踏まえて対象範囲の拡大を検討する
Q2.これまでのChatGPTなどのAI活用とは何が違うのか。
A.企画部デジタル・行政経営担当部長
- これまでのAI活用は、文章作成など個別業務の効率化が中心
- 今回は、個人情報を安全に扱いながら、内部事務システムそのものを改革する基盤をつくる
- これまでAIを使いにくかった住民情報を扱う業務も対象になる
Q3.これまで提案してきた「AIを自治体運営の基盤として活用する」という考え方はどうなるのか。
A.企画部デジタル・行政経営担当部長
- 第一段階として住民情報を扱う業務のBPRを実施
- その成果を検証し、対象業務を段階的に拡大
- 行政情報のデータ化や知識基盤の構築は今後の検討課題
- 「AIを自治体運営の基盤として活用する」という考え方は、今回の協定によって、より具体的かつ実行可能な形で進展する
市は、今回の協定によって、これまで提案してきた取組の実現に向けてさらなる進展が期待されると答弁しています。
Q4.予算の積算根拠は、現在どのように保存・管理されているのか。
A.企画部長
- 予算要求時の積算根拠は財務会計システムに入力されている
- 所属や事業によって積算明細の内容にはばらつきがある
- 査定などで予算額が変わった後は、事業費や内訳金額のみを最終的に管理している
- 査定後の最終的な積算根拠は、財務会計システムには反映されていない
- 他部署の情報を確認できるのは企画・財政部門など限られた所属
Q5.では、翌年度の予算はどのように積算しているのか。
A.企画部長
- 各課が前年度の積算資料などを確認して予算要求している
- 財務会計システムだけでは確認できないため、各課が資料を個別に管理
- ゼロベースでの再考を基本としながら、過去の積算資料も参考にしている
Q6.予算時の見込みと決算実績との差は、どのように検証しているのか。
A.企画部長
- 決算時には執行率、流用状況、実績値などから事業を検証
- 次年度の予算編成時にも、前年の積算内容や決算時の執行率などを確認
- 見込みと実績の乖離が大きい場合は、ヒアリングなどで原因を確認
Q7.担当者が異動した場合、積算の考え方は引き継げるのか。
A.企画部長
- 各課で積算資料を管理し、後任者へ継承している
- 財務会計システムでの管理には一定の限界がある
- 積算根拠の透明性や精度を高めるため、事務マニュアルや引継書の作成を徹底するなど「改善の余地がある」
Q8.主要な積算根拠を、予算審査資料として事前に議員へ示せないか。
A.企画部長
- 過去の積算実績や経緯のデータ化・蓄積は「重要」
- 現在も「予算の概要」「行政資料」などは提供している
- 個別事業の詳細な積算根拠まで事前提供することは、事務量やスケジュールの面から「非常に高いハードル」
- 情報共有の仕組みについて、他市の状況なども参考に研究する
市は、積算実績や経緯のデータ化・蓄積の重要性を認める一方、議会への詳細な事前提供には事務量やスケジュール上の課題があるとしています。
Q9.規則、要綱、内部ルールや行政手続の見直しにAIを使えないか。
A.デジタル行政担当部長
- AIを使って法的根拠の確認、他自治体の事例調査、実務との整合性確認を効率的に行うことが可能
- 提出書類の法的根拠を全庁で一元管理する仕組みは、現在はない
- 全庁横断的な棚卸しと一元管理の仕組みは今後の課題
- 将来的な一元管理の仕組みの構築についても検討する
Q10.全庁横断的な棚卸しを行う場合、誰が行うのか。
A.デジタル行政担当部長
- 現時点では具体的な方法は確定していない
- 実現する場合は、デジタル・行政経営課が一元管理の仕組みを提供
- 各課がその仕組みを使い、自らの規則・要綱・申請手続などを棚卸しする形を想定
Q11.市民に提出を求めている書類を、市が既に持っている情報で代替できないかAIで点検できないか。
A.デジタル行政担当部長
- 市が既に持っている情報や庁内で確認できる情報で代替できないかという視点は重要
- AIを使って代替できるかを点検することは有効
- 各課が条例・規則・要綱などを見直す際に、こうしたAIの活用を促進する
(2)防災・災害対応におけるAI活用
Q12.熊本地震では、AIやデジタル技術はどのように使われたのか。
A.危機管理部長
- デジタル庁は発災翌日からガバメントAI「源内」を提供
- 8月24日時点で109団体が利用
- D-CERTによる物資システムへの入力を効率化するツールの提案や、避難者受付を効率化するアプリの開発・運用なども実施
- 伊勢原市は宇土市へ延べ12人を派遣したが、派遣職員が従事した業務では国などのデジタル支援の利用は確認していない
Q13.伊勢原市では、災害情報をどのように集め、共有しているのか。
A.危機管理部長
- 各部や消防団、自主防災会などから情報を集め、災害対策本部に集約
- スマートフォン型デジタル移動無線機を活用し、被害場所、状況、写真などを災害情報収集システムに登録
- 関係職員が地図上で共有できる
- 避難者情報や支援物資情報を一元管理・共有するデジタル基盤は、まだ導入されていない
Q14.「源内」は、具体的にどのような業務に使われたのか。
A.危機管理部長
- 法律上の問題などに関する相談
- 通知文の作成、資料の要約
- 支援物資に関する情報整理
- 保健・医療・福祉分野のデータ分析
- 実際にどの程度、職員負担の軽減につながったかは、まだ十分に検証されていない
Q15.災害時のAIは、国の仕組みを使うのか、市独自でつくるのか。
A.危機管理部長
- 国と市独自の仕組みのどちらか一方に限定する考えではない
- 国から利用可能なAIが提供された場合は、有効活用することが合理的
- 災害が起きてから考えるのではなく、平時からAIを活用できる業務、扱う情報、職員の利用方法などを整理しておくことが重要
- 市独自の災害対応専用AIについては、費用や維持管理、情報セキュリティなどの課題があり、現時点で具体的な方針はない
Q16.災害情報収集システムは、誰が閲覧できるのか。
A.危機管理部長
- 全職員が一律に閲覧するものではなく、災害対応業務に従事する職員と情報共有する庁内向けのシステム
- 正規職員か会計年度任用職員かという区分ではなく、災害時の配備体制や担当業務に応じて取り扱う
- 消防団や自主防災会などは重要な情報収集・提供主体だが、「関係職員」に一括して含むものではない
- 議員や市民が災害情報収集システムを直接閲覧することは想定していない
Q17.市民から大量の災害情報が寄せられた場合、誰が確認するのか。
A.危機管理部長
- 災害対策本部または情報を受けた部署が、場所、時刻、被害内容、情報源などを精査
- 未確認情報も職員間で共有し、必要に応じて現地確認
- 原則として、現地確認が完了した段階で確認済み情報として扱う
- 訓練や実災害を通じ、運用上の課題を検証する
Q18.集まった大量の情報を、どのような体制で整理し、報告・発信するのか。
A.危機管理部長
- 災害時の応急活動体制の中で、事実確認、整理、集約を行う
- 確認した情報を県や関係機関へ報告
- 議会、報道機関、市民にも、それぞれ必要な形で情報提供・発信する
Q19.情報の整理や要約をAIで支援し、人が確認・判断する役割分担を平時から決めておくべきではないか。
A.危機管理部長
- 災害対応業務のうちAIを活用できる業務や、取り扱う情報の範囲を整理する
- 熊本地震での活用事例や国の検証結果も踏まえ、災害対応へのAI活用の在り方を整理
- 訓練での生成AI活用も含め、実効的な運用方法を整理する
6.所感
今回の一般質問では、数多くの前向きな答弁に、嬉しさと責任の両方を感じました。「聞かなければ分からない」から「検索すれば分かる」組織への転換は、まさしく私が提案してきた内容です。
「AIを使ってみる」段階から、「AIを前提に行政内部の仕組みを変えていく」段階へ。まだこれからの部分もありますが、考え方だけではなく、実際の仕組みとして動き始めたものも出てきました。
予算の積算根拠については、庁内での管理に「改善の余地がある」との答弁があり、過去の積算実績や経緯をデータ化・蓄積することの重要性も認めてもらえました。一方で、それを予算審査資料として事前に議員へ示すことについては「非常に高いハードル」との答弁でした。
まずは、市役所内部で積算根拠をきちんと蓄積し、後から検索できる状態にしていくこと。その先に、議会への情報提供をどう改善していくかという課題があります。
市民が市へ提出する書類についても一歩進みました。各課が条例や規則、要綱などを見直す際、市が既に持っている情報で代替できないかをAIで点検する活用を促進するとの答弁がありました。
こうした改善が積み重なれば、市への提出書類が減る。市役所へ行く回数が減る。同じ情報を何度も書かなくてよくなる。市民がそう実感できるところまでつなげてこそ、本当の意味での市民サービスの向上だと思っています。
私は、本市のAIを活用したDX改革を「いせはらAX」と呼んでいます。行政内部の効率化だけで終わらせず、市民サービスの改善までつなげることができれば、他の自治体にも発信できる取組になると思っています。
危機管理の質問では、熊本地震で国の「源内」が被災自治体などに提供され、災害対応にAIが活用されたことを取り上げました。
一方、伊勢原市では災害情報収集システムの整備は進んでいるものの、災害対応のどの場面でAIを使い、どこを人が確認・判断するのか。訓練まで含めた具体的な運用は、まだこれからです。
事が起きてからAIの使い方を考えるのでは遅いと思います。
今回、「進める」「促進する」「整理する」「検討する」とした答弁がいくつもありました。それらが本当に具体化するのかは、これからです。
これまでどおり、粘り強く働きかけていきたいと思います。
2026年10月01日 20:00