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インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁等(2)

2. 電子メールを利用する方法による選挙運動用文書図画の頒布の解禁

利用主体の制限

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 電子メールを利用する方法※による選挙運動用文書図画については、候補者・政党等に限って頒布することができるようになります(改正公職選挙法第142条の4第1項)。候補者・政党等以外の一般有権者は引き続き禁止されています。
 違反した者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされており(公職選挙法第243条第1項第3号)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。

※電子メールを利用する方法とは、特定電子メールの適正化等に関する法律第2条第1号に規定する方法をいいます。その全部又は一部にシンプル・メール・トランスファー・プロトコルが用いられる通信方式(SMTP方式)と、電話番号を送受信のために用いて情報を伝達する通信方式(電話番号方式)の2つが定められています。電子メールとして定義された2つの通信方式以外の通信方式を用いるもの、具体的には、フェイスブックやLINEなどのユーザー間でやりとりするメッセージ機能は、「電子メール」ではなく、「ウェブサイト等」に該当しますので、候補者・政党等以外の一般有権者も利用可能です。

選挙運動用電子メールの送信が認められる候補者・政党等

選挙の種類候補者政党等
衆議院(小選挙区選出)議員○ 候補者候補者届出政党
衆議院(比例代表選出)議員○ 衆議院名簿登載者衆議院名簿届出政党等
参議院(比例代表選出)議員○ 参議院名簿登載者参議院名簿届出政党等
参議院(選挙区選出)議員○ 候補者確認団体(当該選挙に所属候補者があるものに限る)
都道府県知事○ 候補者確認団体
都道府県議会議員○ 候補者確認団体
指定都市の市長○ 候補者確認団体
指定都市の市議会議員○ 候補者確認団体
指定都市以外の市の市長○ 候補者確認団体
指定都市以外の市の議会議員○ 候補者×
町村長○ 候補者×
町村議会議員○ 候補者×

【参考】電子メールの送信主体制限の趣旨

選挙運動用電子メールの送信については、以下のような理由を踏まえ、候補者・政党等が行う場合に限って解禁されたものです。

  1. 密室性が高く、誹謗中傷やなりすましに悪用されやすいこと
  2. 複雑な送信先規制等を課しているため、一般の有権者が処罰(2年以下の禁錮、50万円以下の罰金、改正公職選挙法第243条第1項第3号の2)され、さらに公民権停止(公職選挙法第252条第1項・第2項)になる危険性が高いこと
  3. 悪質な電子メール(ウィルス等)により、有権者に過度の負担がかかるおそれがあること

【参考】選挙運動用電子メールの転送

選挙運動用電子メールを転送する行為は、一般には、新たな送信行為であると考えられます。したがって、候補者・政党等以外の者は、候補者・政党等から送られてきた選挙運動用電子メールを転送により頒布することはできません。

送信先の制限

 選挙運動用電子メールの送信先には、一定の制限があります(改正公職選挙法第142条の4第2項・第5項)。
 これらの規定に違反して選挙運動用電子メールの送信を行った者は、2年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処することとされており(改正公職選挙法第243条第1項第3号の2)、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第1項・第2項)。

 改正公職選挙法では、選挙運動用電子メールの送信主体は候補者・政党等に限ることとした上で、選挙運動用電子メールが無秩序に送信され、受信者の日常生活に支障を及ぼしたり、想定していない通信費の負担につながったりする場合もあり、電子メールの受信をしたくない有権者もいると考えられることから、送信先についても一定の制限を課すこととされています。

選挙運動用電子メールの送信先

 選挙運動用電子メールは、次の送信対象者に対して、それぞれ次の電子メールアドレス宛に、送信できることとされています(改正公職選挙法第142条の4第2項)。

送信対象者送信対象電子メールアドレス
(1) あらかじめ、選挙運動用電子メールの送信の求め・同意を選挙運動用電子メール送信者に通知した者
(その電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に自ら通知した者に限る。)
選挙運動用電子メール送信者に自ら通知した電子メールアドレス
(2) 政治活動用電子メール(選挙運動用電子メール送信者が普段から発行している政治活動用のメールマガジン等)を継続的に受信している者
(その電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に自ら通知した者に限り、かつ、その後に政治活動用電子メールの送信を拒否した者を除く。)であって、あらかじめ、選挙運動用電子メールの送信の通知を受け、拒否しなかったもの
政治活動用電子メールに係る自ら通知した電子メールアドレスのうち、選挙運動用電子メールの送信拒否通知をした電子メールアドレス以外のもの

選挙運動用電子メールの送信を拒否された場合

 選挙運動用電子メール送信者は、電子メールアドレスを明らかにして選挙運動用電子メールの送信をしないように求める旨の通知を受けたときは、当該電子メールアドレスに選挙運動用電子メールを送信することはできません(改正公職選挙法第142条の4第5項)。


【参考】選挙運動用電子メールの送信の求め・同意の通知の効力

選挙運動用電子メールアドレスの送信の求め・同意は、「あらかじめ」得る必要はありますが、「選挙ごとに」得る必要はありません(改正公職選挙法第142条の4第2項第1号)。

【参考】電子メールアドレスを「自ら通知」するとは

電子メールアドレスを「自ら通知」(改正公職選挙法第142条の4第2項各号)するとは、自らの意思で、選挙運動用電子メール送信者に対し、当該電子メールアドレスを伝えることをいいます。

(自ら通知したと評価できる例)

  1. 電子メールアドレスを記載した名刺その他の書面を選挙運動用電子メール送信者に交付すること
  2. 選挙運動用電子メール送信者に対し通知するため、後援会の入会申込書に電子メールアドレスを記載すること
  3. 選挙運動用電子メール送信者に対し電子メールアドレスを本文に記載した電子メールを送信すること

(自ら通知したとは評価できない例)

  1. 選挙運動用電子メール送信者が名簿を購入し、又は当該選挙運動用電子メール送信者の選挙運動や政治活動とは別の目的で作成された名簿を譲り受け、その名簿に掲載されている電子メールアドレスを知るに至った場合
  2. 選挙運動用電子メール送信者が電子メール配信代行業者を使用してメールマガジンを発行している場合であって、その受信リストに登録されている電子メールアドレスが当該選挙運動用電子メール送信者に通知されないとき

記録保存義務

 選挙運動用電子メール送信者には、一定の記録の保存が義務づけられます(改正公職選挙法第142条の4第4項)。

選挙運動用電子メールの送信の求め・同意をした者に対し送信する場合

 選挙運動用電子メール送信者は、選挙運動用電子メールの送信の求め・同意をした者(改正公職選挙法第142条の4第2項第1号)に対し送信する場合には、以下の事実を証する記録を保存しておかなければなりません(同条第4項第1号)。

  1. 受信者が電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に対し自ら通知したこと
  2. 選挙運動用電子メールの送信の求め・同意があったこと

【参考】保存すべき記録の例

上記1、2の事実を証する記録の例としては、受信者からこれらの通知のために送信されてきた電子メールや送信の申込みの書面が考えられます。

政治活動用電子メールの継続的な受信者に対し送信する場合

 選挙運動用電子メール送信者は、政治活動用電子メールの継続的な受信者であって、選挙運動用電子メールの送信の通知に対し、送信しないよう求める通知をしなかったもの(改正公職選挙法第142条の4第2項第2号)に対し送信する場合には、以下の事実を証する記録を保存しておかなければなりません(同条第4項第2号)。

  1. 受信者が電子メールアドレスを選挙運動用電子メール送信者に対し自ら通知したこと
  2. 継続的に政治活動用電子メールの送信をしていること
  3. 選挙運動用電子メールの送信をする旨の通知をしたこと

【参考】保存すべき記録の例

上記1~3の事実を証する記録の例としては、以下の書面等が考えられます。

  1. ...受信者からこれらの通知のために送信されてきた電子メールや送信の申込みの書面
  2. ...送信時点におけるメルマガの送信先リスト
  3. ...送信者がその通知のために送信した電子メール

【参考】記録保存義務違反の取扱い

選挙運動用電子メールの送信先規制に違反した場合には罰則が設けられており、さらに公民権が停止されることとなることから、送信者の立証の便宜のために、法律上、事実を証する記録を保存する義務が設けられたものです。記録保存義務自体の違反に係る罰則はありません。

表示義務

 選挙運動又は当選を得させないための活動に係る電子メールで送信される文書図画には、送信者の氏名・名称や電子メールアドレス等、一定の事項を表示することが義務づけられます(改正公職選挙法第142条の4第6項・第142条の5第2項)。
 表示義務に違反した場合、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金に処することとされており(改正公職選挙法第244条第1項第2号の2・第2号の3)、禁錮の刑に処せられた場合、選挙権及び被選挙権が停止されます(公職選挙法第252条第2項)。

選挙運動用電子メール送信者の表示義務

 電子メールを利用する方法により選挙運動用文書図画を頒布する者は、当該文書図画に次の事項を正しく表示しなければなりません(改正公職選挙法第142条の4第6項)。

  1. 選挙運動用電子メールである旨
  2. 選挙運動用電子メール送信者の氏名・名称
  3. 選挙運動用電子メール送信者に対し送信拒否通知を行うことができる旨
  4. 送信拒否通知を行う際に必要となる電子メールアドレスその他の通知先

【参考】「選挙運動用電子メールである旨」の表示方法

具体的には、選挙運動用電子メールの任意の場所であって、受信者が容易に認識できる場所に、「選挙運動用電子メール」といった表示をすることを想定しています。

【参考】電子メールアドレスその他の通知先の具体例

電子メールアドレスのほか、例えば、選挙運動用電子メールの配信を解除するための通知を送付できるウェブサイトのURL等を想定しています。

当選を得させないための活動に係る電子メール送信者の表示義務

 選挙期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間、電子メールを利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、当該文書図画に次の事項を正しく表示するようにしなければなりません(改正公職選挙法第142条の5第2項)。

  1. 頒布者の電子メールアドレス
  2. 頒布者の氏名・名称
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