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国会リポート vol.356(2018年5月22日)

 自民党の知的財産戦略調査会(会長 甘利明)では、4つの分科会を設置し、有識者を招いて、延べ21回の会合を開き、「イノベーションエコシステム(生態系)の構築に向けて」という提言を取りまとめ、安倍総理に提出致しました。6月の骨太方針に組み入れ、来年度以降の政府の政策に採用してもらうためです。


 第2次安倍内閣の発足以来、日本経済再生担当大臣として取り組んできたアベノミクスの最終系の政策提言です。私が考えるアベノミクス第1ステージはデフレからの脱却であり、第2ステージは成長と分配の好循環の再構築であり、第3ステージがイノベーションエコシステムの構築です。意味するところは、世界を変えるような新たな製品やサービスやシステムが間断なく連続的に日本から世界へ発出されるというイノベーションの生態系を日本に作っていくということです。アメリカはシリコンバレーにエコシステムがあり、世界を牽引してきました。いまや中国・深圳等でそれに続くエコシステムが出来上がりつつあります。周回遅れの日本は2~3年以内にこれを完成させなければ世界の先陣達に振り切られてしまうという危機感を持っています。


 肝はなんと言っても大学改革です。先頭を走る国立大学群に経営感覚を持たせる。マネージメントとガバナンスを分け、教学の最高峰としての大学に知識産業としての経営感覚を身に着けさせることです。大学ランキング上位の学校は自身のアセット(財産的資産や研究成果という資産)をフル活用し、基本財産を拡大し、さらなるその運用が大学の財務体質を雪だるま式に改善しています。基本財産が数百億円の日本の大学が数兆円のアメリカの大学に勝てるはずがありません。国の補助金頼りの大学ではなく、幅広く寄付金を集め、自身の研究をマネタイズ(事業化・収益化)していく体制が必須です。先頭を走る世界の大学群は国や州からの補助金が減る中で寄付を拡大し、研究を事業化し、10年で基本財産を数十倍に拡大しています。日本の大学は周回遅れではありますが、イノベーションのシーズ(種)は世界一豊富と言われています。企業等からの民間資金を投入し、シーズを実用化していくことが喫緊の課題です。大学や公的研究機関に渡される科学技術研究費数千項目を見える化し、データベースを作っています。企業側のニーズと瞬時にマッチングできるためのシステムです。


 大学の研究員の処遇改革もしていかなければなりません。研究者4人に1人の補助員の日本。欧米先進国は1人に1人。研究者が雑用事務から解放され研究に没頭できる体制です。併せて、ベテランになるだけで厚遇される年功賃金。その一方、論文生産性の高い若手研究者は非正規雇用。研究者は大学を離れようとしています。安定雇用は維持しつつも評価制賃金にする年俸制の導入は必須です。併せて、企業にもCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)を設置し、イノベーションを経営戦略に取り組んでいく。それらを通じて、博士課程を卒業した研究者にキャリアパス(出世の道筋)を設定することも急がねばなりません。

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衆議院議員〈比例代表 南関東ブロック〉

甘利 明

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