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現場から始まった教育――宮崎県立高等水産研修所を訪ねて

宮崎県を訪れ、日南市にある宮崎県立高等水産研修所を視察してきました。

 

 

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ここは、昭和13年に創設された、全国でも数少ない漁業就業者のための研修機関です。驚いたのは、現在の県立高等海洋高校(水産高校)が、この研修所から“枝分かれ”してできた学校だというお話。つまり、「まず現場の訓練が先にあった」というわけです。教育よりも先に、現場のニーズがあった。この順番には、とても示唆を感じました。

 

研修所には「養成部門」と「研修部門」の2つの柱があります。若年層向けの養成訓練から、漁業経験者のスキルアップ研修まで、幅広く担っています。研修生は全寮制で生活を共にしながら、操船技術や漁業の知識、資格取得に向けた勉強に励みます。共同生活を通じて自立心や責任感を育むこの仕組みは、単なる技術習得にとどまらない「人づくり」を目指すものです。

 

現場の漁業者の声も印象的でした。「いきなり船に乗ってこられても困る。基礎からちゃんと教えてくれる場所が必要だ」とのこと。まさにその期待に応える形で、研修所は“即戦力”の人材育成に力を入れていました。

 

一方で、研修所と水産高校は制度上は別組織。水産高校は教育委員会、研修所は知事部局の所管です。そのため、連携には工夫が必要ですが、所長や校長先生が直接話し合える関係性が鍵になっているとのこと。研修所が水産高校の無線実習を担当したり、実習船の共同活用を模索したりと、現場では柔軟な連携が行われていました。

 

 

就業ルートについても考えさせられました。漁師になる道は、大きく分けて「直接現場に入る」「研修所で学ぶ」「水産高校を出て就業する」の3つがありますが、実際には水産高校から直接漁業に進む人はごくわずかだそうです。高校教育が現場とつながっていないという実情に、課題を感じました。

 

リスキリングの観点から社会人向けの研修にも期待が集まりますが、人数が少ないため個別対応が中心で、制度的な支援や仕組みづくりが今後の課題です。漁業を新たな生業にしたいという希望があっても、実際には船の登録や漁獲量の要件など、超えなければならないハードルが多くあります。

 

神奈川県には、横須賀市に県立海洋科学高校がありますが、宮崎のように卒業後の職業訓練の場はありません。高校教育だけでなく、社会人や転職希望者への“第2の学びの場”が必要なのではないかと感じます。そして、教育委員会と知事部局の連携という観点でも、柔軟に協力し合う仕組みづくりが必要です。

 

「教育が現場から始まる」。宮崎での視察は、その当たり前のようでいて、なかなか実現が難しいことの大切さを改めて実感する機会となりました。現場の声を聞き、制度を柔軟に活用しながら、神奈川県でも“海とともに生きる人づくり”の仕組みを見直していきたいと思います。

 

 

 

 

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県議会議員〈横須賀市〉

永井 真人

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