公衆電話のある風景 ― 外房を走って考えたこと
先日、千葉の外房を海岸沿いに車で走りました。海の青さと潮風の香りが心地よく、どこまでも続く水平線に心が洗われるようでした。そんな中、ふと目に留まったのが、コンビニの店先に設置された緑色の公衆電話でした。走るたびに、あちらこちらの店舗で見かけることが多く、三浦半島ではめっきり見かけなくなった光景に少し驚きました。
なぜ外房では今も公衆電話が残っているのだろう――そう思い、少し調べてみました。
NTT東日本によると、公衆電話は災害時にも使える「特設公衆電話」として位置づけられ、自治体と協定を結びながら設置・維持されているそうです。実際、千葉県の「地域防災計画」には、通信が途絶した場合に特設公衆電話を設けることが明記されています。津波や停電などのリスクが高い沿岸地域では、携帯電話の電波が届きにくい場所もあり、こうした事情から公衆電話が意図的に残されている地域もあるようです。
一方で、神奈川県では状況がやや異なります。県庁舎でも利用率の低下を理由に公衆電話が撤去されるなど、全体的には縮小の方向にあります。災害時には避難所などに臨時で設置する「特設公衆電話」を活用する仕組みが整えられていますが、日常の風景として街角で見かけることは少なくなりました。
スマートフォンが当たり前の時代だからこそ、外房で見かけた緑の公衆電話は印象的でした。あの電話ボックスは、単なる懐かしさではなく、「通信の最後の砦」としての役割を静かに果たしているのだと思います。
いざという時に人と人をつなぐための仕組みを、地域がどう守り続けていくのか。その答えが、外房の風景の中にさりげなく示されているように感じました。
2025年11月13日 07:30

