地域の特性を生かす知の拠点――曽於市の挑戦に学ぶ
鹿児島県曽於(そお)市において、地域課題と大学の知見を融合させた新たな拠点が誕生しています。曽於市と鹿児島大学が連携して設立したこの複合施設は、地域の根幹産業である畜産と、全国的な課題となっている産業動物獣医師の不足という現実を背景に誕生しました。
曽於市に整備された南九州畜産獣医学拠点。校舎をそのまま利用して整備。
曽於市は、かねてより「畜産のまち」として知られていますが、獣医師の確保は長年の課題でした。とりわけ、産業動物獣医師は全国的に深刻な人材不足に直面しており、曽於市も例外ではありません。そこで、市と大学が手を携え、産学官連携による「スマート畜産」拠点の整備が進められました。施設ではローカル5Gを活用し、遠隔モニタリングやデータ解析による次世代の畜産研究・教育が行われています。
注目すべきは、この施設がかつての県立高校跡地に整備された点です。2016年(平成28年)に高校が統合され、若者の流れが途絶えていた場所に、全国から学生や研究者が集まる拠点が再生されました。県立高校跡地の無償譲渡を受けて整備されたこの施設は、地方創生の交付金や、獣医療に関連する都道府県計画とも連動し、単なる「跡地活用」にとどまらない、政策連携の好例といえます。
まだ施設としてはスタートを切ったばかりであり、畜産農家への研修や地元への技術還元といった課題も残されていますが、「まずは学生たちの学びの場を確保することに集中したい」という声に象徴されるように、段階的な展開を見据えての取り組みが進められています。
このような事例は、神奈川県における県立高校の跡地活用においても、大きな示唆を与えてくれます。地域の特色を踏まえ、行政・大学・産業が連携した拠点整備は、地域活性化と人材育成を同時に実現しうる機会となります。単なる施設の再利用ではなく、「地域に根差した未来づくり」を支える拠点づくりこそ、今後の学校跡地活用に求められる視点ではないでしょうか。
体育館が屋内馬場に
2025年04月02日 07:30