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キャッシュレス社会の光と影 〜PayPayは誰を幸せにしているのか〜

ここ数年で「PayPayで払います」という声が街角のあちこちで聞こえるようになりました。コンビニでも、個人経営の飲食店でも、スマホひとつで決済が完了する便利さは、一度慣れると手放せません。

 

 

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実際、日本のキャッシュレス決済比率は年々高まってきています。

 

 

日本のキャッシュレス決済比率の推移(2018〜2024)

※経済産業省公表データをもとに筆者作成(2024年3月発表資料)

 

 

実際、日本政府が掲げていた「2025年までにキャッシュレス決済比率40%」という目標は、2024年時点で42.8%とすでに達成されました。現金に代わる新たな決済手段として、キャッシュレスは確実に私たちの生活に根を下ろしつつあります。

しかし、この“便利”の裏側で、誰かが“重さ”を感じていることをご存じでしょうか?


消費者にとっての「光」

キャッシュレスの最大の利点は、その手軽さとお得さにあります。財布を開ける必要もなく、小銭も不要。さらにPayPayや他の決済サービスでは、ポイント還元やキャンペーンが頻繁に行われ、実質的な値引きにもなっています。

 

日常的な支出をスマートに、そして少しお得に済ませられる。これこそが、キャッシュレス社会が消費者に与える「光」の部分です。


店舗にとっての「影」

一方、PayPayなどのキャッシュレス決済を導入する店舗、特に小規模な飲食店や商店にとっては、決して“良いことづくめ”ではありません。

 

PayPayの決済手数料は通常1.6〜1.98%程度。月に100万円の売上があったとしても、1万6,000円から2万円近くが手数料として差し引かれます。現金であればその分まるごと店舗に入るはずだった利益が、目に見えないかたちで失われていくのです。

 

「お客さんは便利になった。でも店は損している気がする」
そんな本音を漏らす店舗経営者は少なくありません。


キャッシュレス業界の“勝ち残り”と淘汰の波

かつて乱立していたキャッシュレスサービスは、今や淘汰の時代を迎えています。


LINE Payは2025年4月に日本国内でのサービス終了。セブン&アイの「7pay」は不正利用が相次いで、わずか3ヶ月でサービスを停止しました。

 

生き残ったのは、PayPay、楽天ペイ、d払いなど、資本力とユーザー基盤のあるプレイヤーたち。こうした業者は、キャンペーンで利用者を囲い込み、手数料で収益を上げていくビジネスモデルを確立しています。

 

その構造は、地方でお金を使っても、利益は東京や大企業に吸い上げられていく仕組みに見えなくもありません。


「誰を幸せにしているのか」という問い

確かにPayPayは便利です。確かにポイントももらえます。
 

しかし、それは誰かの手数料負担の上に成り立っているという現実もあります。

 

「キャッシュレス=未来のインフラ」として前向きに捉えることは大切です。
 

けれども今一度、“誰が得をしていて”“誰がコストを払っているのか”というバランスを見直す必要もあるのではないでしょうか。


地域通貨というもう一つの選択肢

こうした課題意識の中で、注目されているのが地域通貨の活用です。たとえば、逗子市の「ずしPay」や、北海道の「トカチペイ」など、地域限定で使えるデジタル地域通貨の導入が広がり始めています。

 

 

地域通貨は、使える場所をあえて地域に限定することで、消費を地元にとどめ、地元の商店・企業にお金を循環させることができます。しかも、決済手数料が安く抑えられる仕組みが整っていれば、店舗にとっても「歓迎すべきキャッシュレス」となり得ます。

 

地域で使われ、地域で稼ぎ、地域に還元されるお金。
それを可能にするのが、中央集権的な決済サービスではなく、地域主体の通貨設計です。

 

キャッシュレス社会の光と影。そのどちらも認識した上で、私たちは次の問いを持つべきかもしれません。

 

「PayPayは、誰を幸せにしているのか?」
そして――「地域通貨は、誰を幸せにできるのか?」

 

キャッシュレスの利便性を享受しつつ、地域経済や持続可能な社会のあり方を考える契機にすべきと感じます。

 

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県議会議員〈横須賀市〉

永井 真人

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