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「海外闇バイト」──現代型の“日本人拉致”として向き合うべき問題

最近のニュースで、カンボジアや東南アジアへ誘い出され、特殊詐欺のコールセンターに強制的に従事させられる「闇バイト」の被害が報じられています。SNSでの募集文言はこうです。

  • 「渡航費全額負担」

  • 「高収入」「顔出し不要」

  • 「簡単な事務作業」

 

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しかし、実態はまったく違います。現地に到着した途端、パスポートを没収され、携帯も取り上げられ、拘束される。逃げようとすれば暴力。言うことを聞かざるを得ない状況に追い込まれ、日本国内に電話をかけさせられます。

つまりこれは、「アルバイト」ではなく
「詐欺労働への強制動員」=人身取引に近い犯罪 です。


■ 犯罪グループが狙うのは「日本人」

犯罪グループは、構造的な弱点を理解した上で日本人をターゲットにしています。

  1. 日本政府は他国領土で強制的な救出をできない(国際法・主権の問題)
     日本政府には、軍や警察を使って救出する権限はありません。
     現地の警察協力がなければ動けないのが現実です。

  2. 日本人は責任感が強く、断れない文化がある
     指示に従いやすく、逃げにくい。

  3. パスポートの信頼性が高く、犯罪に利用されやすい

つまり、犯罪グループから見ると、

「日本人は誘い出しやすく、支配しやすく、国家が助けにくいターゲット」

なのです。


■ 北朝鮮拉致との違い、そして共通点

北朝鮮拉致は、国家が組織的に日本人を連れ去った事件です。
一方、この闇バイトは 民間の国際犯罪組織 による拘束です。

違いは「主体」(国家か、犯罪組織か)。
しかし、共通しているのは “本人は帰れない” という現実です。

  • 自分の意思は奪われる

  • 在外公館への連絡もできない

  • 監禁・暴力により従わされる

結果として、被害者の自由は奪われます。

「自分で海外に行ったんでしょ?」
「自己責任でしょ?」

そんな声もありますが、
「拘束され帰れない」状況に、自己責任という言葉は当てはまりません。


■ 「電話をかけるだけでも共犯」の法的リスク

日本の法律では、詐欺電話をかければ「実行行為」に当たります。
しかし、現地で監禁・脅迫・暴力があった場合、
本人の意思で行動できたとは言えない状況もあります。

にもかかわらず、帰国すれば「加害者」として扱われることがある。
私は、この構造に強い違和感を覚えます。

本来守られるべきは、
加害者として利用された“若い日本人”の命と尊厳 のはずです。


■ では、日本国家は何ができるのか?

現実に即してまとめると、以下の三点です。

  1. 事前の抑止(情報発信・教育)
     若者に海外リスクを伝える仕組みが必要です。

  2. 被害者救出のルート整備
     現地政府・警察との協力、領事館の危機対応力が重要です。

  3. 「利用された若者を犯罪者扱いしない」法整備
     国家間での人身売買に近い性質がある以上、被害者保護の視点が不可欠です。


■ これは「特殊詐欺」ではなく、現代型の“日本人拉致”

犯罪グループは、日本国の限界を理解した上で若者を狙っています。

「日本は助けられない」という前提で動いている。

であれば私たちは、
「若者が騙されても助けられる社会を作る」 という方向に舵を切るべきです。

よく「啓発」や「注意喚起」という言葉が使われますが、
それだけでは、根本的な解決にはなりません。

必要なのは、
国家として若者を守る仕組み です。


■ 最後に

私は思います。

海外闇バイトは、経済的絶望につけこみ、日本人を拘束し、犯罪に利用する“現代型拉致”。

そして規模は急激に拡大している。

「自己責任」と切り捨てる社会ではなく、
若い命が犯罪に利用される前に守れる社会にしたい。

行政、教育、外交、法制度──
どの分野でも議論が必要です。


このテーマは、これからの日本の課題です。

  • 若者を守れるか

  • 国家が奪還できる仕組みを作れるか

  • 「利用される国」から脱却できるか

 

 

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県議会議員〈横須賀市〉

永井 真人

ながい まさと

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