AI時代「要綱行政」を考察する
先日、私のnote記事「要綱って何だ?」を読んだ伊勢原市ではない自治体職員の方からDMをいただきました。
コロナ禍で補助金・協力金制度の実務を担い、不正受給への対応に苦慮された経験をお持ちの方です。
その方がおっしゃっていたのは、要綱は単なる行政内部のルールに見えるけれど、補助金や協力金の支給が決まった後は、市民や事業者との関係で、契約条件のように機能することがある、ということでした。
対象者、支給条件、取消し、返還、違約金。これらを定める以上、その内容を軽く考えてはいけない。
実務に携わった方だからこその、重みのある言葉でした。
伊勢原市で7月から始まる、生成AIによるLINEでの問い合わせについて。私は、回答の参照元を市のホームページだけでなく、条例や規則、さらには要綱も、AIが参照できるようにすべきではないか、と提案しています。
その理由
市民からの問い合わせの中には、補助金や各種申請など、要綱によって運用されているものが少なくありません。 これが補助金の対象になるのか。どんな書類が必要なのか。返還の義務はあるのか。要綱を見なければ分からないことが、数多くあるからです。
そして、ここまでの回答ができなければ、結局は職員につなげなければならない。市民がAIに求める回答は、速度と正確性、そして、疑問点を解決することです。
この提案は、まだ実現していません。もし要綱を含めるとなれば、さらに考えておくべきことがあります。
本市はすでに、RAG(独自のAI)に要綱や要領を読み込ませています。議会では、「その文書の整合性を誰が精査したのか」と質問しました。
検証していない要綱をAIに読ませれば、AIは矛盾を含んだまま、根拠に基づく回答として返してしまう。誤りが、AIのお墨付きを得てしまうと意見しました。
これは、庁内で職員が使うAIの話。
しかし、もし市民向けのAIに要綱を読ませるなら、同じことが、市民に直接届く形で起こります。職員が使うのとは、わけが違う。
だから、要綱をAIに読ませる前に、確かめておくべきことがある。
行政は、本来、法律や条例に基づいて運営されます。市民の権利や義務に関わることは、議会の関与を経たルールで定めるのが基本です。
一方、要綱は、法律でも条例でもありません。議会の議決を経ずに、行政実務を進めるために定められる、運用上のルールです。
ところが現実には、多くの補助金や助成金、各種支援制度が、要綱によって具体的に運用されています。本来は行政内部のルールである要綱が、市民の暮らしに、確かな影響を与えている。
私は、これが悪いとは言いません。
行政実務を考えれば、要綱は必要です。要綱がなければ、行政は回らない。
だからこそ、議員として言うべきことがある。
要綱がこれだけ重要な役割を担うのであれば、その内容は、定期的に検証され続けるべきではないか。
今も妥当なのか。社会情勢に合っているのか。他の制度と矛盾していないか。市民に、不要な負担を求めていないか。
議決を経ない要綱が行政を動かしている以上、その内容が現在も妥当なのかを確かめ続ける責任が、私たちにはあります。
ただ、これまでは、それが容易ではありませんでした。
要綱は見直す必要があると考えても、人手や時間の制約から、継続的に点検し続けることは難しかったと考えます。行政文書は膨大で、人間だけで、そのすべてを見直して検証することには限界があったと思うのです。
しかし、AIが出てきた。
AIは、人間では見つけにくい矛盾や、長く見直されていない文書を洗い出す有力な手段になり得ます。 AIが出力し、人がその妥当性を判断する。
作業はAIに。判断は人間に。
生成AIは、市民への回答を速くするためだけの技術ではありません。行政制度そのものを、より合理的で、より公平性のあるものへと変えていく可能性を持っています。
そこに、AI時代の行政改革の、本当の価値があると思うのです。
2026年06月27日 19:03