知事提案説明から見える、神奈川の優先課題とは
令和6年第3回定例会が開会し、本日の本会議で知事による提案説明が行われました。県民の暮らしや地域経済、将来に向けた基盤整備に関わる重要なトピックが次々と語られる中で、今、神奈川県政が直面している5つの優先課題が明確になりました。
1.日産自動車の生産撤退問題(追浜・湘南)
提案説明の冒頭を飾ったのが、日産自動車による追浜・湘南工場での車両生産撤退の話題でした。この問題は単に一企業の経営判断にとどまらず、県内製造業の空洞化、関連雇用の喪失、さらには地域経済の再構築に直結する重大なテーマです。次世代モビリティやEVシフトの波にどう対応し、企業誘致や人材育成にどうつなげていくのか。県としての戦略が問われています。
2.川崎市でのストーカー殺人事件
悲惨な事件を受けて、県警や関係機関による再発防止策が求められています。命に関わる課題に対して、制度の運用・連携の抜本的見直しが必要であり、これは行政全体の信頼にも関わる問題です。
3.やまゆり園に関する課題
障がい者支援施設での不適切な対応が明らかになり、福祉分野における信頼回復が急務となっています。利用者や家族に寄り添った仕組みづくりを徹底するとともに、現場の人材不足や制度疲労といった構造的課題にも切り込む必要があります。
4.GREEN×EXPO2027(国際園芸博覧会)
2027年に開催される国際園芸博覧会に向けて、県としての準備が加速しています。ただの一大イベントにとどまらず、持続可能な社会像を提示し、世界に向けた神奈川のメッセージを発信する場としての位置づけが強調されるべきです。脱炭素、地域資源の活用、観光振興との連動がカギになります。
5.法人2税の超過課税延長(5年間)
県独自の財源確保策として続けられてきた法人2税の超過課税について、さらに5年間の延長が提案されました。これは単なる歳入確保ではなく、福祉や教育、防災といった県民サービスの水準を維持するための選択です。一方で、企業活動への影響にも丁寧に向き合いながらのバランスが求められます。
背景にあるのは「構造的に厳しい財政構造」
これら5つの重要な論点の根底には、やはり厳しい財政の現実があります。
本日の提案説明では、令和8年度当初予算の財源不足額が約500億円に上る見込みであることも明らかになりました。
県税収そのものは堅調に推移しており、むしろ増加傾向にあります。しかしその分、地方交付税の算定上マイナス補正が働くため、結果的には「増収=増余裕」とはならない構造が続いています。
加えて、物価高騰、扶助費の増加、公共インフラの老朽化更新など歳出要因が重くのしかかり、限られた財源の中で県政運営のかじ取りが迫られているのが現状です。
「順番」にこそ、メッセージがある
このように見てくると、今回の提案説明は「偶然の並び」ではありません。県経済の根幹(自動車産業)、県民の安全、福祉の信頼、未来への投資(EXPO)、そして持続可能な財政の仕組み。
これらは、バラバラの課題のように見えて、実はすべてが「将来の神奈川をどう築くか」という共通テーマで貫かれています。
今、議会で問うべきこと
こうした中で議会が果たすべき役割は、単なる予算の是非を問うだけではありません。県民の暮らしの現場に寄り添いながら、限られた資源をどう振り向けるかの優先順位づけにこそ、議会の知恵が求められているのだと、あらためて感じさせられる提案説明でした。
2025年09月09日 07:30